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本棚を読む(昭和28年5月28日、堀 辰雄、死去する)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


堀 辰雄の最晩年の書庫。現在も当時のまま本が並べられているようだ 部分拡大→

堀辰雄

昭和28年5月28日(1953年。 深夜1時40分、堀 辰雄(48歳)が、結核で亡くなりました。

は、2年前、「油屋」の隣の家を引き払って向かいに家を新築(現「堀 辰雄文学記念館」(長野県北佐久郡軽井沢町追分662 Map→ Site→)。もうその頃は結核が相当悪く、の指示で多恵子夫人が書庫の本を並べました。大好きな読書もままならず、結局はこの書庫に足を運ぶことさえできなかったとのこと。

どの本がどの位置にどう配置されているかは、著者の思考回路を知る手がかりになります。

の本棚には、夏目漱石森 鴎外芥川龍之介、泉 鏡花、エドガー・アラン・ポーなどの全集のほか、 木下杢太郎きのした・もくたろう 、日本近代文学(幸田露伴佐藤春夫永井荷風萩原朔太郎室生犀星など)、和歌関係(斎藤茂吉、折口信夫など)、俳句関係(松尾芭蕉、与謝蕪村など)、日本の古典(「源氏物語」「伊勢物語」「更級日記」や能・狂言など)、中国思想関係(論語、老子など)、中国文学(詩経、杜甫、李白など)、仏教関係(般若心経、歎異抄、禅、インド哲学、南方仏教など)、考古学関係、東洋・西洋の美術関係、ギリシャ・ローマの神話や文学や哲学関係、西洋哲学関係(スピノザ、デカルト、ベルグソン、モンテーニュ、パスカル、ニーチェ、キルケゴールなど)、キリスト教関係(キリシタンの迫害史を含む)、湯川秀樹などの科学関係、天文学関係、牧野富太郎や貝原益軒などの農学・植物学関係、数学関係、ブルーノ・タウトなどの建築関係、民俗学関係(柳田國男、南方熊楠折口信夫など)ロシア文学(トルストイ、チェーホフ、プーシキンなど)などが並んでいます。石川 淳、加藤周一、川端康成、岸田国士、呉 茂一、神西 清、田宮虎彦、中里恒子、中野重治、中村真一郎、室生犀星、矢内原伊作といった人たちからの献本も多数あり、幅広い交友もうかがえます。

人を指差して「偏っている」とかいう人は、当然、このぐらいの範囲の本は熟読・理解してますよね?(はそんなことを言わないでしょうから)

三島由紀夫

写真集『三島由紀夫の家』Amazon→は、当地の三島由紀夫邸(東京都大田区南馬込四丁目32-8 Map→)を篠山紀信さんが撮影した写真集です。本棚の写真も見開きで12面あります。三島の本棚には、日本の古典(「万葉集」「源氏物語」など)、百科事典の類、各種画集、各種西洋文学、各種西洋哲学、仏教と神道関係、日本近代文学(川端康成谷崎潤一郎など)、歴史関係(『木戸幸一日記』『現代史資料』『昭和史の天皇』など)などなど。の蔵書にも洋書がありましたが、三島の本棚にも多数横文字の本が並んでいます。の本棚には絶対並ばないようなエグい本(『海の性典』『変態性欲考』『ロリータ』『O嬢物語』など)もたくさん並んでいます。

自著に頓着せず散逸するケースもありますが(「自分の本には興味が無い」という正宗白鳥のような作家もいる)、三島は自著もキチンと並べて取ってあります。

小笠原豊樹が訳した『マヤコフスキー詩集』も並んでいます。三島マヤコフスキーとでは思想的には対極ですが、三島は、詰まる所、思想の人ではなく、「態度(情熱、行動)の人」なので案外辻褄があうのかも。

三島邸の書斎の本棚の本は今も当時のままのようですが、非公開。

篠山紀信さんの写真集『三島由紀夫の家』(普及版)を見る 三島の本棚に並ぶ『マヤコフスキー詩集』 ※ 『三島由紀夫の家』より
篠山紀信さんの写真集『三島由紀夫の家』(普及版)を見る 三島の本棚に並ぶ『マヤコフスキー詩集』 ※ 『三島由紀夫の家』より

当地にゆかりある作家・尾﨑士郎の蔵書の一端を、窓ガラス越しですが、「尾﨑士郎記念館」(東京都大田区山王一丁目36-26 Map→ Site→)で見ることができます。歴史関係が多く、『原 敬日記』なども並んでいます。

尾﨑邸の本棚の一角。吉川英治の『太閤記』、富田常雄の『姿三四郎』、福本和夫の『人間毛沢東』、室伏高信の『これが人間である』、小山勝清の『それからの武蔵』、佐野 学の『足利尊氏』、菅原 裕の『東京裁判の正体』などなど 尾﨑邸の本棚の一角。吉川英治の『太閤記』、富田常雄の『姿三四郎』、福本和夫の『人間毛沢東』、室伏高信の『これが人間である』、小山勝清の『それからの武蔵』、佐野 学の『足利尊氏』、菅原 裕の『東京裁判の正体』などなど

城 昌幸の蔵書4,750冊が死後、の自宅近くの馬込図書館(東京都大田区中馬込二丁目26-10 Map→ Site→)に寄贈され、「城 昌幸記念文庫」Site→になっています。かつては開架でしたが、現在はほとんどが閉架。

創価学会員以外にはあまり知られていないようですが、池田大作さんは当地(東京都大田区)で生まれ、昭和41年(38歳)頃までほぼ当地在住でした。若き日の池田さんが山本伸一という名で登場(演:あおい輝彦)する映画「続・人間革命」に、若き日に池田さんが住んでいた当地(大森)のアパートと思しき場所での場面があり、彼の本箱も映ります。よく再現されているようです。池田さんが実際に所有している本を借りて、撮影に利用したのかもしれませんね。

映画「続・人間革命」より。ゲーテ、ボードレール、ユーゴー、ホイットマン、ワイルドといった西洋文学、ニーチェ、マルクス、ベルグソンといった西洋哲学、トルストイ、ドストエフスキーといったロシア文学、横光利一、石川啄木といった日本文学、本居宣長、幸徳秋水、三木 清、西田幾多郎(きたろう) といった日本の思想家、セザンヌなど美術系の本が並ぶ。池田さんの自伝(Amazon→)にも、トルストイ、ペスタロッチ、徳富蘆花、ホイットマンが出てくる。ユーゴーについて池田さんは本も執筆(Amazon→)
映画「続・人間革命」より。ゲーテ、ボードレール、ユーゴー、ホイットマン、ワイルドといった西洋文学、ニーチェ、マルクス、ベルグソンといった西洋哲学、トルストイドストエフスキーといったロシア文学、横光利一石川啄木といった日本文学、本居宣長、幸徳秋水、三木 清、西田幾多郎きたろう といった日本の思想家、セザンヌなど美術系の本が並ぶ。池田さんの自伝Amazon→にも、トルストイ、ペスタロッチ、徳富蘆花、ホイットマンが出てくる。ユーゴーについて池田さんは本も執筆Amazon→

『赤毛のアン』の和訳で知られる村岡花子が住んでいた場所(東京都大田区中央三丁目12-4 Map→)に、平成7年、「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」が開設され、蔵書も公開されていましたが、平成26年、村岡の母校「東洋英和女学院」に蔵書などの資料が寄贈され、現在、同校で「学院資料・村岡花子文庫展示コーナー」(大学院棟1階。東京都港区六本木五丁目14-40 Map→ Site→) として公開されています。

当地には第一次南極越冬隊の隊長だった西堀榮三郎の邸宅(東京都大田区鵜の木一丁目20-1 Map→)もあり一般公開されていましたが(宿泊も可能だった)、現在はありません。居間だけは、西堀榮三郎記念「探検の殿堂」(滋賀県東近江市横溝町419 Map→ Site→)に復元されています。蔵書も見れるのでしょうか?

人の家に行って興味深いのが本棚ですが、本棚をジロジロ見られるのを嫌う人もいるので注意が必要です(脳内を見られるようなものですからね?)。その点、書店や図書館は、思いっきり見れるのが良いです。どんな本をどういった配列で並べているかを“読む”ことで、その書店の店主、その図書館の司書の、技量・知性・矜持を読み取ることができます。

川本 武『本棚が見たい!』(ダイヤモンド社)。写真:津藤文生、大橋 弘。筒井康隆、 邱 永漢(きゅう・えいかん)、細川護熙(もりひろ) 、山田風太郎らの本棚は? 『私の書斎』(地産出版)。本や書斎にまつわるエッセイ。田宮虎彦、山本薩夫、宮城音弥、荒 正人、植草甚一ほか。皆、膨大な本に取り囲まれて生きた
川本 武『本棚が見たい!』(ダイヤモンド社)。写真:津藤文生、大橋 弘。筒井康隆、 邱 永漢きゅう・えいかん、細川護熙もりひろ 、山田風太郎らの本棚は? 『私の書斎』(地産出版)。本や書斎にまつわるエッセイ。田宮虎彦、山本薩夫、宮城音弥、荒 正人、植草甚一ほか。皆、膨大な本に取り囲まれて生きた
『向田邦子の本棚』(河出書房新社)。向田は本屋の女房になりたかったという 草森紳一『随筆 本が崩れる (中公文庫) 』。蔵書が崩壊して死にそうになった体験など
『向田邦子の本棚』(河出書房新社)。向田は本屋の女房になりたかったという 草森紳一『随筆 本が崩れる (中公文庫) 』。蔵書が崩壊して死にそうになった体験など

■ 馬込文学マラソン:
堀 辰雄の『聖家族』を読む→
室生犀星の『黒髪の書』を読む→
三島由紀夫の『豊饒の海』を読む→
尾﨑士郎の『空想部落』を読む→
城 昌幸の『怪奇製造人』を読む→

■ 参考文献:
● 『評伝 堀 辰雄』(小川和佑 六興出版 昭和53年発行)P.187 ● 『堀 辰雄(人と文学シリーズ)』(学習研究社 昭和55年発行)P.178 ●堀 辰雄文学記念館 開館期間・入館料等のご案内/蔵書(著者順和書)(PDF)→ 署名本(寄付者順(PDF)→ ●『三島由紀夫の家(普及版)』(篠山紀信 美術出版 平成12年発行)P.114-137 ●「西堀榮三郎(読切歴史人物伝 5)」※「月刊おとなりさん(平成24年7月号)」(ハーツ&マインズ)P.4-10

※当ページの最終修正年月日
2023.5.28

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