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本の読み方(昭和25年4月16日づけの高見順の日記より)*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高見順

昭和25年4月16日(1950年。 高見 順(43歳)が、日記に次のように書いています。*

・・・読書。(アラン「わが思索のあと」と松下氏の「人間学」を並行的に、一章毎読むことにした。これからこういう読書法を取ってみる。一冊の本を一時に片付けようとして、無理するのでなく──)・・・*

高見は膨大な量の日記を残しましたが、それらの中に「読書」という言葉が頻繁に出てきます。「夜、読書」というふうに簡潔に書かれている場合もあれば、書名をあげて内容に言及される場合もあり。そこそこの厚さの本ならば1〜2日で読み上げている感じです。*

凄まじく集中して読書するのでしょう。高見は戦後直後から病みがちでしたが、食道癌を患ってからはことに悪く、読書もままならなくなりました。そんな中でも、日記やスケッチは盛んにやってますので、それらより読書は高見には大きなエネルギーを要するものだったのでしょう。「読書控えねばならない」「読書の疲労」「医者に読書止められる」「毒だと知りながらも読書」といった言葉が日記に並んでいます。*

それでも、読書は、精神運動であり、死の恐怖を克服するための作業でもあり、体力が許す限り行なっていました。上の日記にあるように「2冊を交互に読んだり」「時間を決めて読んだり」と、読書のやり方も模索しています。*

夏目漱石は一期一会とばかりに、1冊の読書に全身全霊で取り組み、再読はしない主義だったそうです。高見もその手でしょうか。*

山本実彦

以下は、読書法の提案です。*

「本は汚さずに読みましょう」と教わって遵守している方も多いと思いますが(借りた本は当然ですが)、本(またはそのコピー)はなるべく所有し、アンダーラインを引きまくって、書き込みしまくり、時にはページを剥ぎ取ってスクラップしたり、壁に貼ったり、写真を貼り込んだり(知らない花などが出てきたら、ネットで画像を見つけ、プリントして)するのはどうでしょう。日蓮もお経に註釈を書き込んだし、漱石も本にたくさん書き込み、小池真理子さんも本をアンダーラインだらけにするそうです。*

登場人物が多い場合は、余白に人物一覧を作ったり、人物の初出頁にマーキングしたりするのもいいようです。*

本の余白に感想や閃きを書けば、「本=読書ノート(日記)」にもなります。*

あと、目次だけ、前書きだけ、冒頭だけ、結末だけ、後書きだけ、または途中から読むのもありだと思います。「ネタバレ要注意」とかよく聞きますが、筋がわかって読む価値がなくなるようなものは、それだけのもの。優れた文学は、どこから読んでも、新鮮な洞察や描写に出会えます。第一、律儀に頭から読んでいっても、終わり頃には頭の方を忘れてますし(笑)。行きつ戻りつして読むのもいいかもしれません。読んだ冊数を誇る人がいますがどんなものでしょう。作家が全体重をかけて書いた作品なら「1冊に全てが含まれている」のではないでしょうか?*

1つの音楽を繰り返し聞くように、同じ人に何度も会うように、気に入った本は何度でも読み返したいです。その都度、新たな発見・気付きがあることでしょう。織田作之助は、「繰りかえし読む百冊」があれば充分としました。*

・・・高等学校時代ある教授がかつて「人生五十年の貧しい経験よりもアンナカレーニナの百頁を読む方がどれだけわれわれの人生を豊富にするかも知れない」と言った言葉を、僕はなぜか印象深く覚えているが、・・・(中略)・・・もう一度読みかえすのは御免だというのであれば、はじめから読んで置かない方がましであろう。・・・(織田作之助「僕の読書法」より)*

何度も読み返す価値のない本は、1度読む価値もないということでしょう。*

仕事の合間に(仕事から逃避して?)読む、寝る前に読む、電車で読む、カフェーで読むなど、読む時間や読む場所が違えば皆違った読書になることでしょう。ドストエフスキーは月明かりで読書したそうです。小説の舞台で、その箇所を読むのも一興。堀 辰雄の諸作品は軽井沢の、三島由紀夫の『美しい星』は石川県内灘の、志賀直哉の『暗夜行路』は広島県尾道の、優れたガイドブックです。

藤浦 洸の故郷・平戸に彼の著書『らんぷの絵』を持っていってみた* 藤浦 洸の故郷・平戸に彼の著書『らんぷの絵』を持っていってみた*

出てきた地名は地図帳で確かめマーキングします。小中学校で買わされた地図帳で結構事足ります。ない地名は書き込めばいいですし。短い一生、旅できる場所などたかがしれています。読書で世界中を旅したいものです。辺境の地にだって足を踏み入れることができます。*

三島由紀夫の小説は見慣れない言葉たちがキラキラしてますが、案外、中くらいの国語辞典に載っている程度の単語で構成されています。辞典に載っているぐらいの単語は積極的に使い、日本語が細らないようにしていたのではないでしょうか? 新しく出会った言葉にはやはりマーキング、辞書にももちろんマーキング! 本にも辞書にも痕跡を残していきます。痕跡を残しておけば、後になって、そこにまた戻って確認したり、深めたりできます。*

親子、兄弟姉妹、夫婦、友だち、知り合いで同じ本を読んで語り合うのも楽しそう。実際に会えなければ、ネット上でも可能でしょう。小関智弘さんは、1冊の本について語り合う月一の読書会を45年以上続けておられます。機械工も、設計屋も、営業マンも、教員も、主婦も集うとのこと。人の感想を聞き、時には意見を闘わせることで、読みが深まることでしょう。*

朗読したり、書写したり、暗記したり(作家の 直井 潔 なおい・きよし 志賀の『暗夜行路』の後編を丸暗記したそうだ!)、もいいですね。中学の時、『奥の細道』とか『平家物語』の冒頭を丸暗記させられたおかげで、今も諳んじることができます。今頃になって、いい文章だなとしみじみ思ったりします。そうか、暗記すれば、その本が手元になくても、その言葉たちを持ち歩けるのか・・・。N先生に感謝。*

読む姿勢も人それぞれ。書き込みをしたり線を引きながらの読書はある程度姿勢を保つ必要があるかもしれません。織田作之助のように「夜はもちろん昼でも寝そべらないと本が読めない」というような人もいます。*病臥するようになった片山広子は洋書をよく読んだようです。横になっての読書は、目を縦に動かす和書より洋書の方が楽なようです。*

それはそうと、まずは、選書ですね。

ショウペンハウエル『読書について 他二篇 (岩波文庫) 』。読書は考える力を奪う? 多読は有害か? 情報過多の時代への警告 M.J.アドラー、 C.V.ドーレン『本を読む本』(講談社)。訳: 外山滋比古(とやま・しげひこ) 、槙 未知子。自分にあった読書法を見つける
ショウペンハウエル『読書について 他二篇 (岩波文庫) 』。読書は考える力を奪う? 多読は有害か? 情報過多の時代への警告 M.J.アドラー、 C.V.ドーレン『本を読む本』(講談社)。訳: 外山滋比古 とやま・しげひこ 、槙 未知子。自分にあった読書法を見つける
平野啓一郎『本の読み方 〜スロー・リーディングの実践〜(PHP文庫)』。量より質の読書術 読書補助具「リーディングトラッカー 〜 読み込みの集中力がアップ(ブックマークとしても使える)(8枚セット)」*
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■ 馬込文学マラソン:
高見 順の『死の淵より』を読む→
小池真理子の『欲望』を読む→
堀 辰雄の『聖家族』を読む→
三島由紀夫の『豊饒の海』を読む→
志賀直哉の『暗夜行路』を読む→
藤浦 洸の『らんぷの絵』を読む→*
小関智弘の『大森界隈職人往来』を読む→*
片山広子の『翡翠』を読む→*

■ 参考文献:
● 『高見 順 日記 第八巻』(勁草書房 昭和40年発行)P.388-389* ●『続 高見 順 日記 第七巻』(勁草書房 昭和52年発行)P.120-121* ●「漱石の読書法」※『読書のすすめ(現代教養講座4)』(福原麟太郎 角川書店 昭和32年発行)P.90-92* ●「小池真理子さん(作家の読書道)」WEB本の雑誌→)* ●「僕の読書法」(織田作之助)※「定本 織田作之助全集 第八巻」(文泉堂出版 昭和51年初版発行 平成7年発行第3版)に収録* ●「いつもそばに本が」(小関智弘)※「朝日新聞(朝刊)」(平成15年3月16日-30日掲載)* ●『片山廣子 ~孤高の歌人~』(清部千鶴子 短歌新聞社 平成9年初版発行 平成12年発行3刷)P.92-93*

※当ページの最終修正年月日
2024.4.17

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