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会半ばで、長老的存在の野口
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その場にいた萩原朔太郎(39歳)が書いた「野口米次郎論」のことも、野口は批判しました。朔太郎は、本質を周りに理解されない野口の“孤独”を即座に感じ取って、またそれを吐露する野口の“詩人的敏感性”に感じ入り、すくっと立って、その思いを
先生とは何だ!
先生という必要はない!
と野次が飛びます。
岡本 潤(24歳)です。岡本はアナキズムに共鳴しており、「先生」とかいった“権威”が大嫌いだったのです。2年前(大正13年)、「文芸戦線」と「文芸時代」が創刊され、文学界をモダニズムが
野口はいたたまれなくなって会場を後にし、会場には重い空気が流れます。
次に爆発したのが、尾崎喜八(34歳)でした。彼も「先生」という言葉を使ったのでしょうか。またもや、
先生とは何だ!
先生という必要はない!
・・・、すると我慢ならなくなった朔太郎は、岡本をしかり飛ばします。それに応じて、岡本が朔太郎に接近。
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そこで室生犀星(36歳)が登場。「朔太郎危うし」と、椅子を振り廻しながら朔太郎を助けにいった・・・というのが、この騒動のあらましです(「中央亭騒動」という)。
その後のことを朔太郎が書いています。
・・・何か私が不当の暴行でも受けているように見誤り、友人の一大事として決死的に突進して来たのである。昔の室生犀星を知っている僕には、こうした犀星をみても自然であり、深く驚くこともなかったが、彼の純一な人間的本質を知らない多数の会衆には、いかにそれが晴天の
考えの違いはあっても、皆、純な気持ちで本質を追求する「詩人」たちではあったのです(「計算高くて狡いヤツ」(そう人のことを近頃は“頭がいい”と呼ぶらしい)はいない)。
続きがあります。
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後日、この騒動を知った芥川龍之介(34歳)が、犀星に激励(?)の手紙を出しています。
敬愛する室生犀星よ、
椅子をふりまはせ
椅子をふりまはせ
と。皆、血の気が多いですね(笑)。
大正6年に設立された「詩話会」には、様々な人が集まりましたが、4年後の大正10年3月に象徴派・高踏派的傾向のある北原白秋、日夏耿之介、西條八十、三木露風、堀口大学らが脱退、新たに「新詩会」を立ち上げます。詩誌「日本詩人」は、白秋ら脱退の8ヶ月後に残留組が「詩話会」の機関紙として創刊(大正10年。新潮社)。残留組には民衆詩派的傾向(大正デモクラシーの影響、平易な表現、社会性の重視)がありました。「日本詩人」は「中央亭騒動」の半年後の大正15年11月に終刊となりますが(大正時代もその1ヶ月後(大正15年のクリスマス(12/25))に終焉)、それでも大正時代にもっとも長く刊行された詩誌で、詩界に一定の影響力を持ちました。
その後、「中央亭騒動」に象徴されるようにプロレタリア文学(プロレタリア詩)が勃興し、それによって民衆詩派も衰退。そしてプロレタリア文学も当局より弾圧されて影をひそめ、代わりに日本浪曼派が台頭・・・。
当初の「詩話会」が、流派のつまらない小異にこだわらずに、本質追求といった文学の大同の立場に立って、相互理解を図り、その多様性が保たれたなら、一定の影響力が保持でき、昭和前期の満州侵略からアジア太平洋戦争に至る、「非文学的状況」(「国民は国家のためなり」といった没個人的状況)に対する何らかのカウンターになったかもしれません。
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| 星野文子『ヨネ・ノグチ 〜夢を追いかけた国際詩人〜』(彩流社) | 鮎川信夫『近代詩から現代詩へ 〜明治、大正、昭和の詩人〜 (詩の森文庫)』(思潮社) |
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| 苗村吉昭『民衆詩派ルネッサンス 実践版 〜一般読者に届く現代詩のための持論〜』(土曜美術社出版販売) | 小林真大『詩のトリセツ』(五月書房新社)。編:片岡 力 |
■ 馬込文学マラソン:
・ 萩原朔太郎の『月に吠える』を読む→
・ 室生犀星の『黒髪の書』を読む→
・ 芥川龍之介の『魔術』を読む→
・ 北原白秋の『桐の花』を読む→
■ 参考文献:
●「中央亭騒動事件」(萩原朔太郎)※『虚無の詩・思想のうた 現代詩篇1(現代詩鑑賞講座 第七巻)』(角川書店 昭和44年発行)P.366-370 ●『萩原朔太郎全集15』(筑摩書房 昭和63年発行)※年譜 ●『馬込文士村ガイドブック(改訂版)』(東京都大田区立郷土博物館編・発行 平成8年発行)P.53 ●『切なき思ひを愛す(室生犀星文学アルバム)』(
※当ページの最終修正年月日
2023.5.11