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映画「残菊物語」の一場面。新派を代表する女形・花柳章太郎(写真右)が男役に挑んだ作品。この作品も一種の成長譚 ※「パブリックドメインの映画(根拠→)」を使用 出典:特選名画劇場「早稲田松竹」/特集 溝口健二の映画の世界!→
昭和56年7月26日(1981年。
北海道の 「北の国から」は、昭和56年から平成14年までの21年にわたって放送された倉本 妻の不倫をきっかけに離婚した夫(黒板五郎、演:田中邦衛)が、2人の子ども(純、演:吉岡秀隆。蛍、演:中嶋朋子)を連れて、東京から五郎の生まれ故郷、北海道富良野の町外れの廃屋同然の家に移り住むといったストーリーです。電気もガスも水道も通わない隙間だらけのボロ屋で生き抜くことは簡単でありません。一種のサバイバルもの(冒険譚)ともいえます。 富良野に来た時、純は小学校4年で、蛍は小学校2年。純は勉強もできる要領のいい典型的な“都会っ子”。蛍の方はのんびりしていて、父親の五郎と一緒に母親の不倫現場を目撃してしまったという点でも、兄の純とは異なります(そのことを心に秘めている)。そんななので、純は、富良野での“原始生活”に不満タラタラですが、蛍は父への同情心からか健気にガンバります(ガンバり過ぎてしまうくらいに・・・)。 過酷な
「北の国から」は、21年にもわたる壮大な「成長譚」です。作中の純と蛍の成長とともに、俳優、吉岡秀隆・中嶋朋子の成長もドラマを通して知ることができます。「北の国から」を超える壮大さと深さを持つドラマは世界に類がないのではないでしょうか。 「北の国から」を1巻1巻購入するとかなり費用がかかります(繰り返し見たいのでできれば所有したい)。「日本映画専門チャンネル」(Site→)で、連続ドラマ24話から「2002年 遺言」まで一括放送されることがあるので、それがオススメ。録画もできます。月額、基本料込みで1,200円ほどです。月ごとに解約・再加入も可能です。
当地(東京都大田区)にゆかりある映画「残菊物語」も「成長譚」と言えるでしょう。当地に墓のある溝口健二が監督し、奇しくも溝口の墓の隣に墓がある花柳章太郎が主演しています。 実在の歌舞伎の 駆け出しの頃の菊之助の芸のまずさは周知のことでしたが、天下の名人・五代目・尾上菊五郎の跡取りということで、周りが気を使い、厳しい意見が菊之助の耳にまで届きませんでした。菊之助自身自分の芸のまずさは身にしみていましたが、誰も何も言ってくれません。それでいて、陰ではその芸のまずさを皆 そんな中、尾上家の子守りのお徳だけが菊之助に率直な意見を言ってくれました。その真情に触れ、菊之助は付き合いや遊びにうつつを抜かしている我が身を反省、やる気を取り戻し、またそんな彼女に惹かれていきます。ところが、封建的な社会で、身分の違う2人の仲は許されるわけもなく、それでも思いをとげようとする2人は尾上家を追われ、大阪へ。大阪では、親の七光りは通用せず、観客は菊之助の芸の未熟さを遠慮なく嘲笑します。2人はとうとう田舎回りの劇団へと流れていくのでした。絶望して荒みがちな菊之助をお徳は懸命に励まし、そして、菊之助はその逆境の中で、ようやく芸の本質をつかんでいきます。 菊之助が将来が保証されている歌舞伎界を去ったのも「冒険」だったでしょう。敷かれたレールの上を平穏無事に歩んで行くのも人生でしょうが(でも、つまらなそう)、より高みを目指すのなら、師匠の元や権威を去ったり、長い“旅”に出たりする必要があるかもしれません。「北の国から」や「残菊物語」といった「成長譚」が多くの人の心を捉えるのは、多くの人が自分の“成長”を願ってやまない証かもしれません。 成長は、仕事、学芸、スポーツ、あるプロジェクト、または日々の生活を通して促され、それぞれの分野の「成長譚」を生み出しています。山本周五郎の『赤ひげ』は、若いエリート医師が、市井の個性的な医者「赤ひげ」の元で働く中で、医者としても人間としても成長していく話でした。 二ノ宮知子さんの『のだめカンタービレ』でも、やはりエリート音楽家の「先輩」(千秋真一)が、「のだめ」(野田 恵)の“変態的”な才能に出会って、“出来るだけの音楽家”から、“真に魂を揺さぶる音楽家”へと成長していく過程が描かれていました。「のだめ」も成長しますが、「先輩」の成長がさらに著しかったです(「のだめ」はある意味最初からスゴいので)。 川口松太郎の『日蓮』では、浜夕(近所のお姉さん)との係りの中で成長していく日蓮が描かれていましたし、『赤毛のアン』では、ちょっと風変わりな孤児・アンをマリラが受容していく(成長していく)プロレスが肝かも。 小説家としての悪戦苦闘を赤裸々に綴った小島政二郎の自伝的小説『眼中の人』も成長譚。 現在(令和4年7月26日現在)、「東京新聞」の夕刊で連載されている辻村 成長が生き方を逆転させるほど劇的な場合は“生まれ変わる”物語ともなります。 成長には、決意、覚悟、一時の集中も必要でしょうが、それだけではたぶん足りません。地味でシンプルですが、極めて効果的なのが「毎日やる」こと。 人生の途中にピークを置かず、老いも、死に至るプロセスも“成長”ととらえてみてはどうでしょう。
■ 馬込文学マラソン: ■ 参考文献: ※当ページの最終修正年月日 |