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昭和2年12月25日(1927年。
、 『怪奇童話集』の冒頭を飾る中編小説「怪魔島征服」は「冒険小説」です。
こういった「冒険小説」はいつ頃から書かれ、読まれるようになったのでしょう?
日本近代文学はロシアを含む西洋諸国の文学の影響を受け明治20年前後から本格的に展開されますが、「冒険小説」はそれよりも10年ほども前に日本にやってきました(西洋文学の受容は「冒険小説」から始まった)。フランスの作家・ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』の翻訳本(訳:川島忠之助)が出たのが原作発行(明治6年)の5年後の明治11年です。 『八十日間世界一周』(Amazon→)は、80日間で世界を一周できると豪語する変人紳士・フィリアス・フォッグとそれに反論する遊び仲間の賭けから始まります。勝てばフォッグは2万ポンドという大金を手にしますが、1秒でも遅れたら全財産を失います。フォッグと
明治5年(『八十日間世界一周』発行の1年前)の10月2日の8時45分の列車でロンドンを出発。80日後の12月21日の8時45分に遊び仲間の集まるクラブに帰還できればフォッグの勝ちです。しかし、1秒でも遅れたら・・・。海と陸を駆け巡る2人を数々の困難が待ち受けています。 飛行機が実用化されていない時代なので(ライト兄弟の初飛行は30年ほど後の明治36年)、2人の移動手段は鉄道・船(蒸気船・帆船)・気球・象・風力車・馬車などです。経由地は、スエズ、ボンベイ、カルカッタ、香港、横浜、サンフランシスコ、そしてロンドンへ。経由地に日本(横浜)もあり、その点も日本人に受けたのでしょう。同作は平成になっても新訳版が出て、今なお読み継がれています。
ヴェルヌ作品はその後も、『海底二万里』(Amazon→)、『月世界旅行』(Amazon→)と翻訳されていきます。明治29年に森田 「冒険小説」の面白さは、「課題(プロブレム)」の非日常性やユニークさにかかっています。『月世界旅行』には月に行くという壮大なプロブレムがあり(1865年発行ですから、江戸時代にですよ!)、『十五少年漂流記』では子どもたちだけで見知らぬ島で生き抜くというプレブレムに読者の心が踊ることでしょう。特に子どもに勧めたい一冊です。 「冒険小説」では時間の「制約」 が重要です。『八十日間世界一周』では80日間、「怪魔島征服」では5日間という「制約」がありました。ウルトラマンだって戦える時間は3分間! 「冒険小説」の原型は記録された最古の物語にもあり、古今東西・老若男女を問わず広く愛好されてきました。西洋古代文学の代表『オデュッセイ』(紀元前700年代末。弥生時代)(Amazon→)は海洋冒険譚であり、西洋中世の騎士物語(聖杯探索譚など)も魔術や怪物や巨人が登場する冒険譚。騎士物語はセルバンテスの『ドン・キホーテ』(Amazon→)などにも受け継がれていきます。中国の『西遊記』(1300年代頃。鎌倉時代頃)(Amazon→)も冒険譚ですね。 時代が下って、英国のデフォーが書いた『ロビンソン・クルーソー』(1719年)(Amazon→)、米国のマーク・トウェインが書いた『トム・ソーヤーの冒険』(明治9年)(Amazon→)、英国のルイス・スティーヴンソンが書いた『宝島』(明治16年)(Amazon→)なども「冒険小説」と言えるでしょう。 「冒険小説」のエッセンスを日常生活に活かすこともできます。時間の「制約」を設けることで、いつものルーティンな仕事も「ゲーム」として楽しめるかもしれません。例えば、「2時間かけていた仕事を1時間でやりきる」といった「課題(プロブレム)」と決め、知識や技能といった「アイテム」をゲットしつつ、クリアーを目指す。 重要なのは「課題(プロブレム)」を自らが設定すること。誰かから強いられたり指示されたなら興味深いことも一挙に苦役に転じるかもしれません。何かの試験や検定、市販のゲームや、ガイドブックが提供するメニューなど出来合いの「課題(プロブレム)」は、つまらない序列を生みがちだし、そこに留まる限り発展性もありません。誰かの
フィギュアスケーターの羽生結弦さんは「プロブレムが好き」なんだそうです。それですね!
■ 参考文献: ※当ページの最終修正年月日 |