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| 犀星の『女ひと』を飾った古径の梅雨草 | 犀星の『つゆくさ』を飾った蓬春の梅雨草 |
当地(東京都大田区)には物書きだけでなく美術家も数多く住んだので、他にも、両者のコラボレーションがありました。
山本周五郎と
意外にも、周五郎は近所(南馬込五丁目)の北園克衛とも親しくしていました。北園は、詩でもデザインでも、俗な人情は排し、純粋な造形美を目指した感があり、人情味豊かな作品で知られる周五郎とはおよそ方向性が違うようですが、二人とも戦中、当地にとどまり、けっこう行き来しています。北園も周五郎の本を装丁しています。クールなデザインで、周五郎の本じゃないみたいですが(笑)。
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| 周五郎の『島原伝来記』を飾った朝生の絵 | 周五郎の『なんの花か薫る』の装丁は北園克衛 |
当地(東京都大田区)に出入りしていた詩人の日夏耿之介や堀口大学と、版画家の長谷川 潔も、コラボレーションしていますね。
昭和12年発行の川端康成の『雪国』(Amazon→)の装丁を、3年前の昭和9年より当地(東京都大田区西蒲田)に工房を構えた染色家の
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『雪国』の表紙。シワのある紙に抽象的な図柄が染め付けられている |
言うまでもなく「本」はテキストだけで成り立つのではなく、その形態も重要な要素です。その形態(装丁)に確固としたイメージを持つ作家も少なくないことでしょう。犀星もそういった一人でした。
当サイトでも取り上げている『黒髪の書』を造本するにあたり、犀星は編集者に自筆の文字だけで構成する装丁案を提案しています。カバーや表紙に余計なイメージを付加したくなかったのでしょう。しかし、「時代の感覚に合わない」という理由で編集者に退けられ、画家の絵がカバーを飾ることになりました。表紙(カバーを外した本体の表紙)に辛うじて犀星の意向が残っています。
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| 『黒髪の書』のカバー | 『黒髪の書』の表紙 |
上掲の梅雨草が絵柄の二作品『女ひと』『つゆくさ』を今一度ご覧ください。昭和30年(犀星66歳)に発行された『女ひと』の題字は活字になっています。犀星はそれが不満で「また僕の装丁が崩れた」と編集者に書き送りました。3年後(昭和33年犀星68歳)に発行された『つゆくさ』では、自筆の題字が復活、著者名も活字でなく
人に任せるのでは物足りず、自ら装丁する物書きも少なくありません。
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| 北原白秋が自装した詩集『おもひで』。明治時代にしてこの洗練した感じ | 萩原朔太郎が自装した詩集『 |
堀 辰雄の『聖家族』も、自装本(著者自らが装丁した本)です。
最後に、傑作をば1点。
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宮沢賢治の『春と修羅』。布に広川松五郎の絵。 |
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| 大貫伸樹『装丁探索』(平凡社)。「装丁も楽しまなければ本の価値を半分しか摂取していない」。掲載書影300点余り。デザイナーによる装丁論 | 小林真理『画家のブックデザイン』(誠文堂新光社)。小村 |
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| 鈴木 |
「装丁家 鈴木 |
■ 馬込文学マラソン:
・ 室生犀星の『黒髪の書』を読む→
・ 山本周五郎の『樅ノ木は残った』を読む→
・ 『北園克衛詩集』を読む→
・ 川端康成の『雪国』を読む→
・ 北原白秋の『桐の花』を読む→
・ 萩原朔太郎の『月に吠える』を読む→
■ 参考文献:
●『大森 犀星 昭和』(室生朝子 リブロポート 昭和63年発行)P.257-260 ●『犀星の本づくり』(室生犀星記念館 平成25年発行)P.10-12 ●『小林古径(巨匠の名画16)』(学研 昭和52年発行)※年譜(作成:関 千代) ●「孤高の画家 花岡朝生(1)(2)」(大庭美恵子 ※「月刊おとなりさん」(令和元年9-10月号 ハーツ&マインズ)掲載) ●『山本周五郎 馬込時代』(木村
※当ページの最終修正年月日
2023.3.19