|
|||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
|||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
|||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
||||||||||||||||||||||||||
![]() |
|
||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||
![]() |
矢野綾子 |
昭和10年12月6日(1935年。 堀 辰雄(30歳)の婚約者だった矢野綾子が、結核で亡くなりました。矢野は、堀の自伝的小説『風立ちぬ』(Amazon→ 青空文庫→)のヒロイン・節子のモデルになった人です。
二人は前年(昭和9年)9月に婚約、しかし、年を越すと矢野の病状が急変し長野のサナトリウム(結核療養所)に入ることになります。堀も長年胸を患っており、看病も兼ね一緒に入所しました。冬、矢野の病状はさらに悪化します。
『風立ちぬ』では、節子の死の前日のことを、「私」の手記の形で書いています。節子は、窓から見える山
・・・「あそこにお父様の横顔にそっくりな影が、いま時分になると、いつも出来るのよ。……ほら、
その低い山が彼女の言つてゐる山であるらしいのは、その指先きを
「もう消えて行くわ、……ああ、まだ額のところだけ残ってゐる……」・・・(中略)・・・私はそれから急に力が抜けてしまったようになって、がっくりと膝を突いて、ベッドの縁に顔を埋めた。そうしてそのままいつまでもぴったりとそれを顔に押しつけていた。病人の手が私の髪の毛を軽く
部屋の中までもう薄暗くなっていた。
多数受けしそうなラブラブを想像した方は意外かもしれません。節子の「
![]() |
死を目前にした芥川龍之介が、遺書(「
・・・
この“末期の目”という言葉に心
あらゆる芸術の極意は、この「末期の眼」であろう(川端康成「末期の眼」より)
まだ先があるだろうという
人は、最期に、「どういう景色を見」「どういう言葉を発し」死んでいくでしょう。
平野啓一郎さんの小説『本心』は、安楽死を望みつつも事故死した母親の“本心”にたどり着こうとする「僕」(一人残された息子)の物語。母親が「最期に見たいと願った景色」のイメージが「僕」を救い、母親の死を受け入れ、母親の思いを内面化し、母親から自立し、そして、他者を愛する時がやってきます。
ロマン・ローランの『ジャン・クリストフ』(Amazon→)で、主人公・ジャンの祖父が息を引き取る場面が印象的でした。威厳があり、限りなく優しかった祖父でしたが、混濁した精神状態で叫びます、「お母さん!」と。最後の最後に呼び求めるのは、全的に受け入れてくれる「母なる存在」なのでしょうか。
東山
・・・なあ、あんた。男が弱々しくつぶやいた。後生じゃから、お乳を見せてくれんかのう。
怒気含みで足を踏み出した鹿康平を、シャオは首をふって止めた。それから片手でシャツのボタンをはずし、胸をはだけ、白い乳房を男の汚れた手に触れさせた。その手はぶるぶる震えていた。男は唇を突き出してチュッチュッと音をたてた。シャオは彼の頭を撫でてやった。鹿康平はそっぽを向いて舌打ちをしたが、そのわずかなあいだに男は死んでしまった。シャオはしばらく顔を伏せていた。
鹿康平は男のゴツゴツした手を見下ろした。半開きで、一生なにかを取り逃がしつづけてきたような手だった。余すところなく惨めな死のなかで、最期に乳房に触れることができたその手だけが満たされていた。・・・(東山彰良『怪物』より)
「観音さま」は女神を起源とするともされます。文壇を騒がせた“美女”山田順子は、晩年、鎌倉の長谷寺で観音に救いを求めています。
![]() |
![]() |
![]() |
山岡鉄舟 |
明治21年山岡鉄舟(52歳)が胃ガンにより死去しました。皇居に向って、
鉄舟を見舞った海舟にも、11年後(明治32年)に最期が訪れます。海舟の最期の言葉は、
コレデオシマイ
923名の臨終の様子を『人間臨終図巻』全4巻(●15-49歳の死(Amazon→) ●50-64歳の死(Amazon→) ●65-76歳の死(Amazon→) ●77-100歳の死(Amazon→))に著した山田風太郎は、海舟のこの一言を、最期の言葉の「最高傑作」としています。
今までは人のことだと思ふたに
俺が死ぬとはこいつはたまらん
さすがは筋金入りの“脱力系”。
名脇役・
は〜い
志賀直哉の最後の作品集『枇杷の花』(昭和44年(85歳)発行 日本の古本屋→)に「ナイルの水の一滴」 という短文があります。誰しも唯一無二の存在だけれども、
![]() |
![]() |
| 山田風太郎『人間臨終図巻( 上)(角川文庫)』。927名の死に方 | エリザベス キューブラー・ロス『死ぬ瞬間 〜死とその過程について〜 (中公文庫)』 |
![]() |
![]() |
| 堀川惠子『教誨師 (講談社文庫)』。半世紀にもわたって死刑執行に立ち会った僧侶・渡邉普相。死刑による罰としての「死」について考える | 『辞世の歌』(笠間書院)。編:松村雄二。「我死なば焼くな埋めるな野にすてて飢えたる犬の腹をこやせよ」(歌川広重)ほか |
■ 馬込文学マラソン:
・ 堀 辰雄の『聖家族』を読む→
・ 芥川龍之介の『魔術』を読む→
・ 川端康成の『雪国』を読む→
・ 子母沢 寛の『勝 海舟』を読む→
・ 志賀直哉の『暗夜行路』を読む→
■ 参考文献:
●『堀 辰雄(新潮日本文学アルバム)』(昭和59年発行)P.106 ●『美しい日本の私(角川ソフィア文庫)』(川端康成 平成27年発行)P.16-19 ●『芥川龍之介(新潮日本文学アルバム)』(昭和58年初版発行 同年発行2刷参照)P.86、108 ●『江戸文人おもしろ史話』(杉田幸三 毎日新聞社 平成5年発行)P.68-72 ●『志賀直哉(新潮日本文学アルバム)』(昭和59年発行)P.87-96
※当ページの最終修正年月日
2025.1.4