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裁かれた戦中の言行(昭和23年5月22日、尾﨑士郎らに「政治的発言、行動を禁止する」追放令状が出る)*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポツダム宣言」第6条より。原文は英語で書かれている。哲野イサクさんの訳文を使わせていただきました。リンク:哲野イサクの地方見聞録/<参考資料> ポツダム宣言 全訳/お詫びと訂正→*

 

昭和23年5月22日(1948年。 尾﨑士郎(50歳)らに 「政治的発言、行動を禁止する」 追放令状が出ました。*

米国、英国、中華民国が発した「ポツダム宣言」(日本への降伏要求の最終宣言)を、昭和20年8月14日、日本は受諾。その「世界征服に赴かせた影響勢力及び権威・権力は永久に排除されなければならない」といった条文に従い、GHQは、戦犯容疑者らを逮捕し、また、その勢力・権威として、職業軍人、特高、憲兵、国家主義団体や大政翼賛会の有力者はもとより、海外に出先機関を持つ金融機関や開発組織の有力者、占領地の行政長官、マスコミ関係者、財界人、言論人、地方議員、行政官庁の職員、地方公務員、教員にいたるまで、20万人ほどを処罰・追放したようです。尾﨑ら文学者にも最後の方で令状がでました。*

尾﨑のほかにも当地(東京都大田区)に縁ある、徳富蘇峰(85歳)井上司朗(45歳)北村小松(47歳)佐佐木茂索(53歳)火野葦平(41歳)らに令状が出ます。*

ほかに文壇人では、菊池寛(59歳)武者小路実篤(63歳)岩田豊雄(54歳)石川達三(42歳)、山岡荘八(41歳)らにも令状が出たようです。*

意外にも(?)、婦人運動家の市川房枝(55歳)、戦時中も軍部を批判し続けた石橋湛山(63歳)、松下電器の創業者松下幸之助(53歳)、“特撮の神様”円谷英二(46歳)、改造社の創立者山本実彦(63歳)らにも令状が出ているようです。*

尾崎士郎

尾﨑についていえば、昭和16年、高見順(当時34歳)が、文学は国民を決起されるには非力であるとして軍国主義的翼賛体制から距離を置こうとすると(「文学非力説」)、尾﨑(当時43歳)はただちにその弱腰を批判しました。*

昭和18年からは文学報国会の常務理事を務め、軍国主義的翼賛体制に寄与。尾﨑の追放令状の通知書には、「『文学部隊』『戦影日記』『文学論』『林房雄トノ対話』等ニヨル影響力甚大ナリト認ム」とあったとか。*

昭和17年、尾﨑が書いた『日蓮』(小学館)という小説には、元寇がらみで以下のような下りがあります。*

・・・もはや、蒙古の襲来を待つときではない、進んで高麗を攻め蒙古を侵略せよ、といふ聲が民間からも湧くやうに聞えてきたのである。・・・*

・・・「戦の機微はわれより先手を打つことにある。財を持つものは財を捧げよ。力を持つものは力を致して国家の難に当れ!」・・・*

さらには、阿仏房あぶつぼう (遠藤為盛とも)といえば高齢をおして佐渡から3度も身延の日蓮を訪ねたとされる人物ですが尾﨑はその阿仏房を、元寇を迎え撃つ戦場に赴かせ、「最後の死に花を咲かせていただければ身にあまる光栄に存じまする」と言わせています。*

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徳富蘇峰

その影響力の大きさから蘇峰にはA級戦犯の容疑がかけられますが、高齢と持病の神経痛が考慮されて不起訴になったようです。*

北村小松と円谷英二は、戦争映画「燃ゆる大空」に関わったのですね。北村が原作者で、円谷が特撮を担当しています。主題歌の作詞は佐藤惣之助で、作曲は山田耕筰。*

井上司朗(逗子八郎)は、内閣情報局(戦争に向けた世論形成などを目的とした)で要職にありました。*

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この大規模な逮捕・追放によって、日本の軍国主義は一掃されるかに見えました。*

ところが、米国は昭和20年7月16日に「世界初の原子爆弾の実験」(トリニティ実験)に成功しており、対枢軸国の政策においてソ連に協力も求める必要も少なくなっており、その翌日から開かれた「ポツダム会談」(昭和20年7月17日〜8月2日。「ポツダム宣言」が表明された)あたりですでに東西の冷戦構造が顕在化しつつあったようです。*

国内も、軍国主義者の排除によって左派・自由主義・民主的・労働運動勢力が伸張。 昭和24年1月の衆議院総選挙では、日本共産党が4議席から35議席まで議席を伸ばします。*

それらを脅威に感じてか、GHQの日本の占領政策が、対軍国主義から対共産主義へと大きく転換します(「逆コース」)。昭和24年に起きた「松川事件」も、共産主義者(労働組合員)のイメージを貶めるためにGHQとそれに従わざるを得なかった(?)日本政府・警察・司法の関与が疑われています。それが本当だとしたら、まさに陰謀で、極めて残酷な人権侵害です。無実の人を死刑にしようというのですから。*

昭和25年には、中華人民共和国の毛沢東とソ連のスターリンの同意と支援を受けた北朝鮮軍が、38度線を越えて南に侵攻、「朝鮮戦争」が始まりました。*

昭和27年、「サンフランシスコ平和条約」で日本(沖縄を除く)の主権が回復(?)したことにともなって「追放令」が解除され、戦中の言行が十分に検証されないまま(?)、追放解除者が続々と日本の中枢部に返り咲きます。占領終結後初の国会議員選挙(昭和27年10月。衆議院)では、当選者の42%を追放解除者が占めたとか・・・。(孫崎『アメリカに潰された政治家たち』)。*

※このページの年齢は昭和23年5月22日(尾﨑士郎らに追放令が出た日)時点のもの*

 

増田弘 『公職追放論』(岩波書店。平成10年発行)* 『柳河瀬 精(やながせ・ただし) 『告発 戦後の特高官僚 〜反動潮流の源泉〜』(日本機関紙出版センター)。逮捕者数十万人。虐殺80人あまり。獄死者1.617人。特高官僚のその後は?*
増田弘 『公職追放論』(岩波書店。平成10年発行)* 柳河瀬 精やながせ・ただし 『告発 戦後の特高官僚 〜反動潮流の源泉〜』(日本機関紙出版センター)。逮捕者数十万人。虐殺80人あまり。獄死者1.617人。特高官僚のその後は?*
吉野孝雄 『文学報国会の時代』(河出書房新社。平成20年発行)* 桜本富雄 『日本文学報国会 〜大東亜戦争下の文学者たち〜』(青木書店。平成7年発行)。高値がついています。お近くの図書館でお探しください*
吉野孝雄 『文学報国会の時代』(河出書房新社。平成20年発行)* 桜本富雄 『日本文学報国会 〜大東亜戦争下の文学者たち〜』(青木書店。平成7年発行)。高値がついています。お近くの図書館でお探しください*

■ 馬込文学マラソン:
尾﨑士郎の『空想部落』を読む→
井上司朗の『証言・戦時文壇史』を読む→
高見順の『死の淵より』を読む→

■ 参考文献:
・『評伝 尾﨑士郎
 (都築久義 ブラザー出版 昭和46年発行)
  P.215-221、P.286-308、P.355-356

・『佐佐木茂索(随筆集)』
 (文藝春秋 昭和42年発行) P.355

・『日蓮』(尾﨑士郎 小学館 昭和17年発行)P.263-267

・『高見順 人と作品』
  (石光葆 清水書院 昭和44年初版発行 昭和46年2刷参照)
  P.56-58、P.80

・『詩人 高見順 その生と死』
 (上林猷夫 講談社 平成3年発行) P.282

・ 『そうだったのか! 現代史(集英社文庫)』
 (池上彰 平成19年初版発行 同年発行2刷参照)P.111-138*

・ 『アメリカに潰された政治家たち』
 (孫崎 享 小学館 平成24年発行)P.26

■ 参考サイト:
ウィキペディア/ポツダム宣言(平成28年5月15日更新版)→
ウィキペディア/公職追放(平成28年4月18日更新版)→
ウィキペディア/情報局(平成30年4月3日更新版)→*
ウィキペディア/燃ゆる大空(平成29年9月20日更新版)→*
ウィキペディア/武者小路実篤(平成25年4月26日更新版)→
ウィキペディア/ポツダム会談(平成29年3月10日更新版)→*
ウィキペディア/冷戦(平成30年5月4日更新版)→*
ウィキペディア/核実験(平成30年3月17日更新版)→
ウィキペディア/トリニティ実験(平成30年4月30日更新版)→

松岡正剛の千夜千冊/『改造社と山本実彦』松原一枝→

※当ページの最終修正年月日
2018.5.22

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