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作家自らが店番に立つ(貸本屋「鎌倉文庫」、開店する)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敗戦間近の昭和20年5月1日(1945年。 鎌倉在住の作家たちが、蔵書を持ち寄って、鎌倉の若宮大路(現在・「しょうび洋装店」(鎌倉市小町二丁目12-29 map→)がある2階建の建物がある辺り)で、貸本屋 「鎌倉文庫」 を始めます。**

久米正雄 川端康成 高見順

戦争による出版事情悪化で減った収入を補うため、と戦争で荒み切った人心にわずかでも楽しい材料を提供したいとの思いで、気軽に始められたようです。高見 順(38歳)の日記に次のようにあります。*

・・・小林秀雄来訪。鎌倉に立てこもるについて、籠城組の鎌倉文士の間に、対策を今から立てておいたらどうだろうという話を持って来た。翌日、久米正雄を訪れて意見をきこうということになった・・・(中略)・・・久米家へ行く。小林はさきに来ていた。ペン・クラブ(注:鎌倉ペン・クラブ)の有志が集るということになった。・・・(中略)・・・貸本屋の話が出て、急速に具体化しようということになった。川端さんに来て貰って相談した。発案者は久米、川端。駅前に家を借り、鎌倉文士の蔵書を集めて貸本をやろうというのだ。当局の折衝、貸家の交渉は久米さんが当り、本集めその他の雑務は私がひきうけようといった・・・(『高見 順日記』(昭和20年4月5〜6日付)より)**

何とかせねばと言い出したのが小林秀雄(43歳)で、アイデアを出したのが久米正雄(53歳)川端康成(45歳)、実務の中心になったのが久米高見のようです。その他にも、里見 弴(56歳)中山義秀(44歳)が協力、小島政二郎(51歳)大佛次郎(47歳)永井龍男(40歳)林 房雄(41歳)らも蔵書を提供しています。作家本人やその妻までもが店番に出、話題となって、繁盛していきます。人々は文字に飢えていたのです。*

鎌倉文庫は悲惨な敗戦時に唯一つ開かれてゐた美しい心の窓であつたかと思ふ(川端康成『貸本店』より)

その後、大同製紙の出資を受け、幸か不幸か、「鎌倉文庫」は、同昭和20年9月、出版社になり、翌昭和21年1月には株式会社化します。久米が、「文藝春秋」の追い打ちを意識したのはこの頃でしょうか。急成長を遂げた「文藝春秋」は、戦後、戦争協力したとして同昭和21年3月解散の憂き目を見ます。

鎌倉文庫」は、文芸誌 「人間」 を創刊。 当時無名だった三島由紀夫(20歳)の短編 「煙草」 は、そこに掲載されました。 同社は 「婦人文庫」 「社会」 「ヨーロッパ」 「文藝往来」 といった雑誌、 『現代文学選』 『大衆文学選』 といった選集、 『20世紀外国文学辞典』 なども出版します。 『20世紀外国文学辞典』 は、若き日の遠藤周作(22歳)が編集に係わりました。

「婦人文庫」 は、吉屋信子(49歳)が初代編集長になり、真杉静枝(43歳)、中里恒子(35歳)、村岡花子(51歳)らが参加。 その人脈が女流文学者会を生み、林芙美子(41歳)、宇野千代(47歳)佐多稲子(40歳)らも加わりました。

鎌倉文庫」は、東京の茅場町に独立した社屋を持つまでになりましたが、同業他社も追い上げてきます。「文藝春秋」も、早くも昭和21年6月には佐佐木茂索(50歳)を中心に文藝春秋新社として再出発、巻き返してきます。「鎌倉文庫」は、業績を落とし、社員のストライキなどもあって、昭和24年に解散。わずか5年ほどの“祭”で終わりました。

※ 上記の年齢は、鎌倉文庫ができた昭和20年5月1日時点のもの

染谷孝哉 『鎌倉もうひとつの貌』
染谷孝哉 『鎌倉もうひとつの貌(かお)』。「鎌倉文庫」についてもあり

■ 馬込文学マラソン:
川端康成の 『雪国』 を読む→
高見順の 『死の淵より』 を読む→
小島政二郎の 『眼中の人』 を読む→
三島由紀夫の 『豊饒の海』 を読む→
吉屋信子の 『花物語』 を読む→
宇野千代の 『色ざんげ』 を読む→
佐多稲子の 『水』 を読む→
染谷孝哉の『大田文学地図』を読む→

■ 参考文献:
・ 『鎌倉もうひとつの貌』
  (染谷孝哉 蒼海出版 昭和55年発行)P.115-116*

・ 『鎌倉の文学 小事典 〜文学を歩く〜』
  (編:伊藤玄二郎 かまくら春秋社 平成17年発行)P.44-46*
   ※清水 崑が描いた「鎌倉文庫」の外観のスケッチあり*

・ 『鎌倉文学散歩(カラーブックス)』
  (安宅夏夫 保育社 平成5年発行)P.74*

■ 参考サイト:
ウィキペディア/鎌倉文庫(平成24年5月6日更新版)→
ウィキペディア/文藝春秋(平成27年4月22日更新版)→

鎌倉/おすすめ情報/鎌倉コラム/鎌倉文士 ~もうひとつの古都の素顔~→

有隣堂/Web版 有隣/第455号「文学都市としての鎌倉(3) 」→

なるこちゃんブログ《高知の観光情報ブログ》/「横山隆一と鎌倉文士と高知展」へ行ってきました♪【高知市】→
※清水 崑が描いた「鎌倉文庫」の店内あり

※当ページの最終修正年月日
2019.5.1

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