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投票ぜず、そして、悪政・・・(第13回衆議院議員総選挙の開票。堺 利彦、25票)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堺 利彦 宮武外骨
宮武外骨

大正6年4月22日(1917年。 第13回衆議院議員選挙の開票がありました。

「売文社」が軌道に乗り始めた堺 利彦(46歳)も東京市(現在の東京23区は明治22年から昭和18年まで東京市だった)で立ちましたが、得票数はなんと25票。しかし、25票で驚くなかれ、言論の自由を訴え続けた 宮武外骨 みやたけ・がいこつ (50歳)などはたったの3票です。にしても宮武にしても、影響力が小さくなかったはずですが、この有様でした。

日本の選挙を振り返ってみます。

ルソー 中江兆民 福沢諭吉
ルソー
中江兆民

日本には民主主義という考え方がありませんでしたが、明治になって、フランス革命の思想的基盤となった天賦 てんぷ 人権論(人は生れた時から自由・平等の権利を有するとする考え方)を唱えたルソーの思想が入ってきます。明治5年、中江兆民がルソーの『民約論』(『社会契約論Amazon→)を翻訳、福沢諭吉は自身の慶應義塾でいち早く教科書として採用しました。

「人民が政治のあり方を決定していく」という民主主義の考え方も広まっていき、『民約論』の日本語訳が出た2年後の明治7年には、板垣退助(36歳)・後藤象二郎(35歳)らが、「民撰議院設立建白書」を薩長閥政府に提出、自由民権運動が活発化していきます。

明治22年には「大日本帝国憲法」とともに「衆議院議員選挙法」(以下、「選挙法」)も公布されて、翌明治23年に初の(衆議院議員)総選挙が行われ、国会が開かれるようになりました。

しばらくは記名式だったり(公開選挙制。日本では明治33年に無記名の秘密選挙制に改められた)、また、納税額条件のある制限選挙だったりで、や宮武らのように得票数が異常に低い人がいたのでしょう。普選運動(普通選挙運動)が盛んになり、大正14年になって、ようやく、納税条件が撤廃され「普通選挙」が実現しました(実は女性は除外された「制限選挙」だった)。

しかし、「普通選挙法」が成立した1ヶ月後には、「普通選挙」によって広まることが予想される民主主義を弾圧する目的の「治安維持法」が制定されてしまいます。「普通選挙法」が“飴”ならば、「治安維持法」は“鞭”。その“鞭”が日本を破滅に導いていきました。

後藤象二郎

こういった“闘い”の末、 民主主義の根幹をなす投票権が獲得されましたそれなのに、恥ずかしいことに、今の日本、投票率が異常に低いです。なぜでしょう?

それは、投票率を上げたくない人たちがいるからです。一部の支持母体の票で当選している政治屋(政治家の名に値しない政治屋)とその政治屋の施策や差配でうまい汁を吸っている人たち(または安定的な生活を送っている一部の人たち)は、その他の票を増やしたくないのです。マスコミ・放送・行政機関の広報が本気になれば投票率を爆上げすることが可能なのに、なぜかそうなりません。全候補者に10〜20個ほどの重要な質問をして、それを一覧にして繰り返し示すことすらできていないようです(美辞麗句を並べた選挙公報はほとんど役に立たない)。「カンペなし質問の事前通告なしの公開討論会」を企画・放送すれば候補者の資質が明らかになるはずなのに、不思議なことにこれもあまり行われていないようです。おそらく、マスコミや放送界や行政サイドにも投票率を上げたくない人たちが紛れ込んでいるのでしょう(それに、選挙に行く場面のあるドラマやアニメってあったっけ? “悪”と戦うのもいいけど、まず選挙行こうね?)。

あと、投票という文化的行為を憎む、無教養で怠惰な人たち(または投票所にいくのが怖い臆病な人たち)も一定数いるようです。そういった人たちが、「選挙ダセぇ〜」とか、「魅力ある候補者がいない」とか、「〜に政治を持ち込むな」とか、「政治の話はご法度」とか、「それどころでない(忙しい)」などと盛んに言います。彼らとて一応は民主主義に同意するポーズは取るのでしょうが、実は、民主主義を全く理解していないか、または、民主主義なんて大嫌いなのでしょう(威張りたい人か、威張っている人の腰ぎんちゃくになって得したい人たち)。社会の要職に付いている人やTVに出るような人にもそういう人が結構いるので、観察してみてください。投票しない人には悪政を批判する資格がないし、悪政の責任の一端があるとさえいえます。

「有権者になったその年から投票にいくことができる人間」(主権者)に育てるのは社会・学校・家庭の責任です。

我が子が有権者になって迎える初めての選挙はドキドキですね。「社会に関わることができる人」に育ったか否かが明らかになるのですから。子どもが初めて投票した日には赤飯を炊いて祝ってあげてください。

子どもを主権者に育てるには、常日頃から子どもと政治の話(社会の話)をするのは当然のこと、小さい頃から選挙に連れていき大人(社会人)の意識と態度を子に示すのも有効でしょう。投票日間近になって急に「選挙に行こう♡」とやっても、たぶん手遅れです。

子どもも親に「お父ちゃん、お母ちゃん、もう選挙済ませたの?」とか聞いてみましょう。民主主義も理解しようとしない分からんちんの親からはさっさと自立するのが得策です。

期日前投票がおすすめです。天候不順などで行きづらくなる可能性があるので、なるべく早くに済ませましょう。投票所入場券というのが国や地方自治体から送られてくるので、その裏面の「期日前投票宣誓書」(大袈裟だな)にチェックとサインするだけです。投票所入場券を忘れても投票できます。「あっと言う間」に済みます。もちろん普段着のままでいいし、サンダルばきでもいいし、仕事や学業の休み時間や遊びやデートの合間に駆けつけるのもいいでしょう。初めてでも投票所の人たちが親切に案内してくれます。

「所属団体の長に言われたからその人に投票する」といった非主体的な投票は恥ずべきことなので、自分で選びましょう。最初は投票すべき人がよく分からないでも、えい、や、と投票してしまいましょう。投票行動を取ること自体にも十分に社会的意義があります。投票しているうちに、次第に投票すべき人(社会全体のことを真摯に考えてくれる人)が見えてくることでしょう。「仕事や学校を休んででも投票に行く」というのが常識になるといいですね。

『宮武外骨 (別冊太陽)』 (平凡社)。頓知と反骨のジャーナリストの生涯 『民主主義 (角川ソフィア文庫)』。民主主義の基本に立ち返る。解説:内田 樹
『宮武外骨 (別冊太陽)』 (平凡社)。頓知と反骨のジャーナリストの生涯 『民主主義 (角川ソフィア文庫)』。民主主義の基本に立ち返る。解説:内田 樹
池上 彰『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ(第4版)』(海竜社) 松林哲也『何が投票率を高めるのか』(有斐閣)
池上 彰『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ(第4版)』(海竜社) 松林哲也『何が投票率を高めるのか』(有斐閣)

■ 参考文献:
●『パンとペン』(社会主義者・堺 利彦と「売文社」の闘い)(黒岩比佐子 講談社 平成22年発行)P.321-324 ●『明治大正史(上)』(中村 隆英たかふさ  東京大学出版会 平成27年初版発行 同年発行4刷参照)P.207-209 ●『詳説 日本史研究』(編集:佐藤 信、五味ごみ文彦、高埜たかの利彦、鳥海とりうみ 靖 山川出版社 平成29年初版発行 令和2年発行3刷)P.350-358

※当ページの最終修正年月日
2024.4.23

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