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横溝正史  | 
       
「宝石」創刊号から、横溝正史の『本陣殺人事件』(「金田一耕助シリーズ」の第1作)の連載が始まりました。話者の「Y」(小説中の著者。岡山に疎開していたなど実際の筆者・横溝を反映しているが同一ではない)が疎開先の岡山で村人から聞いた話を元に書いたという設定になっています。その話に金田一が出てきます。昭和12年で、金田一が24歳の時です(金田一は大正2年生まれという設定)。
そして戦争、金田一も従軍。復員後、金田一は瀬戸内海の孤島「獄門島」での事件を解決します。そして、岡山で療養中のYを訪ね、2人は意気投合しました。『獄門島』(Amazon→)は、金田一の許可を得てYが書いたという設定です。
「獄門島」事件の解決後、金田一は、東京へ戻る汽車の中で旧友の風間俊六に会い、その後は、当地(東京都大田区大森)に風間が持つ
続いて起きた「黒猫亭事件」(昭和22年。金田一34歳)は、東京郊外のG町で起きた「顔なし事件」(体型から女性と分かっても、腐乱していてもはやどういった顔か判別できない状態だった)ですが、この作品に、金田一と当地(東京都大田区)との関わりや当地での金田一の様子が書かれています。
・・・「耕ちゃん、いるか」
        と、がらりと障子をひらいたが、すると、しゃれた四畳半のまんなかで、新聞に埋まって坐っているのは、なんと、金田一耕助ではないか。
       金田一耕助は風間の顔を見ると、
       「き、き、き、君、か、か、か、風間……」
       と、たいへんな吃りようで、・・・(横溝正史『黒猫軒事件』より)
風間は、金田一が東北の中学校(宮沢賢治と同じ盛岡中)に通っていた時の同窓で(かつて岩手県に金田一村があった。現・
その後、金田一は、昭和32年(44歳)に世田谷の緑ヶ丘の高級アパート「緑ヶ丘荘」に越すまでの10年間、当地の「松月」にいました。なので、横溝の名作『悪魔が来りて笛を吹く』(Amazon→)、『犬神家の一族』(Amazon→)、『八つ墓村』(Amazon→)、『悪魔の手毬唄』(Amazon→)の事件を解決した時、金田一は東京都大田区に住んでいたことになります。「大森の山手」というので、山王二丁目(Map→)あたりでしょうか。
横溝は金田一を3人の人物から造形したようですが、いつも和服の城 昌幸も念頭にありました(あとの2人は横溝自身と菊田
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金田一の活躍は戦後(『本陣殺人事件』があったのは戦前ですが、横溝が金田一シリーズを書くのは戦後)からですが、名探偵・明智小五郎は戦前から知られていました。江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』で初めて登場します。初出は大正14年発行の「新青年」。明智は大正末には読者に知られていました。
『D坂の殺人事件』では、D坂(団子坂。東京都文京区)(Map→)の中程にある喫茶店「白梅軒」に入り浸っている「私」が、同店で「妙な男」と知り合います。この「妙な男」が明智小五郎です。
明智はダンディーなイメージですが、「D坂の殺人事件」での明智は、モジャモジャ頭でそれを引っ掻き回す癖があり、木綿の着物にヨレヨレの帯、まるで金田一耕助でした。年は25歳を超えておらず、痩せ型。歩くとき肩を振る癖がありました。顔は講釈師の5代目神田伯竜(小島政二郎の『一枚看板』(NDL→)のモデル Photo→)に似ていたとされます。煙草屋の二階の四畳半に下宿し、部屋の四方は本が山をなし、中央のわずかな隙間で寝起きしていました(住環境も最初の頃の金田一に似ている)。
ところが、5年後の昭和5年、当地(東京都大田区)にやってきた頃の明智はもはや別人です。大森の山手に住まう宝石王の一族の皆殺しを企む復讐鬼と対決しますが(『魔術師』(Amazon→))、「D坂の殺人事件」から5年しかたっていないのに、すでに40歳近くになっています。相変わらず独身。素人探偵業でお金はありませんが、すでに数々の事件を解決しており、警察からも一目置かれるようになっています。洋装となり、身のこなしもスマートで、女性にもめっぽうモテます(復讐鬼の“娘”が惚れて命を救うほどに)。「講談倶楽部」に掲載されたおり、岩田専太郎が挿絵を描いています。明智がビジュアル化された最初でしょうか。岩田の絵が読者はもちろん著者・乱歩の“明智像”に影響したことでしょう。
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| 団子坂(D坂)の中程あたり。明智小五郎出現の地 | 岩田専太郎が描いた明智小五郎 出典:『魔術師(創元推理文庫)』 | 
金田一は一貫してスタイルを保ち、明智は華麗に変身していったのですね。
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| 「本陣殺人事件」。原作:横溝正史。出演:古谷一行、佐藤 慶、淡島千景ほか | 横溝正史『真説 金田一耕助 (角川文庫)』 | 
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| 江戸川乱歩『D坂の殺人事件(創元推理文庫)』 | 中川 | 
  
■ 馬込文学マラソン:
・ 城 昌幸の『怪奇製造人』を読む→
・ 『北園克衛詩集』を読む→
・ 小島政二郎の『眼中の人』を読む→
■ 参考文献:
●「宝石(創刊号)」(岩谷書店 昭和21年発行)。目次、P.64(編集後記と奥付) ●「詩学」(安藤一郎)、「城 昌幸」(瀬沼茂樹)、「宝石」(中島河太郎)※『新潮 日本文学小辞典』(昭和43年初版発行 昭和51年発行6刷)に収録 ●『黒猫亭事件』(横溝正史)※「別冊 幻影城」(幻影城 昭和51年発行)P.212-215、P.252-253 ●『馬込文士村ガイドブック(改訂版)』(編・発行:東京都大田区立郷土博物館 平成8年発行)P.44 ●「月光詩人の彷徨」(長山靖生)※『怪奇製造人』(城 昌幸 国書刊行会 平成5年発行)の解説 ●『大田文学地図』(染谷孝哉 蒼海出版 昭和46年発行)P.120、P.206 ●「岩佐東一郎主宰の「交書会」と戸板康二にまつわるあれこれ」(藤田加奈子)(戸板康二ノート→) ●「大井
※当ページの最終修正年月日
  2025.3.20