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相互扶助の精神(明治35年7月18日、加納久宜、入新井信用組合を創設)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加納久宜

明治35年7月18日(1902年。 加納久宜かのう・ひさよし (54歳)が、当地の自宅(「大森山王ホームズ」(東京都大田区山王三丁目31-21 Map→)が建つあたりにあった。加納邸にあった「明治天皇の皇后来駕(明治35年)の記念碑」が残る Photo→)に、「 入新井 いりあらい 信用組合」(現「城南信用金庫」) を創設しました。

信用組合とは、農協や生協などと同じく、協同組合運動の中で生まれた金融組織です。協同組合とは、ある地域内(または特定業種内、同じ職場内)で、労働者が相互に助け合うことを目的にした組織。58年前の1844年(黒船来航の9年前)、英国のマンチェスター地方で、世界で初めての協同組合「ロッチデール公正先駆者組合」が誕生しました。

資本主義社会以前の社会は、農業を基本産業として、人々は地縁、血縁で結びつき、相互扶助(助け合い)をしていました。しかし、人々は貧しく、相互扶助も共同体の規範によって縛られた強制的なものでした。

世界は1700年代末から現代社会に突入します。科学技術の発展により機械が開発され、機械を導入した工場が建ち(「産業革命」)、それにともない、機械や土地や余剰金をもつ「資本家」が誕生。その「資本家」が、資本を持たない「労働者」を支配するようになります。資本主義の時代の到来です。

資本主義は、今までのどん底の貧困状態から人々を解放した一面もありましたが、「資本家」が「労働者」を隷属させて(こき使って)肥えふとり、非人間的な差別構造や、絶望的な格差が顕著になってきます。

「資本」(軍事力を含む)を背景に他国を隷属していったのが帝国主義です。

「ロッチデール公正先駆者組合」は、こういった 産業革命や資本主義がもたらした経済的不安定を改善するため、28人の労働者が集って1ポンドずつ出し合い、困った時助け合うことを始めました。出資額に差が出ても、議決するときは「1人1票」。「資本」の力が働かないようにしたのです。「ロッチデール原則」と呼ばれ、現在も協同組合運営の規範になっています。

ヘルマン・シュルツェ
ヘルマン・シュルツェ
ヘルマン・シュルツェ
フリードリッヒ・ライファイゼン

協同組合運動はドイツにも伝わり、ヘルマン・シュルツェが商工業者のための信用組合を、フリードリッヒ・ライファイゼンが農家のための信用組合を設立。それらはドイツ全土に広まり、地方の経済を支えました。

当時、ドイツの信用組合の成果を目の当たりにした品川弥二郎と平田東助が、ドイツ留学から帰国し、「産業組合法」の制定に尽力、明治33年に制定されました。 「入新井信用組合」は「産業組合法」制定後いち早く(制定後2年)作られ、その先駆けとなります。

農家も、明治33年に制定された「産業組合法」に基づいて産業組合を作るようになりました。現在のJA(Japan Agricultural Cooperatives。農業協同組合(農協))は、それらの産業組合を母体に、戦後(昭和22年)制定された「農業共同組合法」(農協法)に基づいて設立されました。

co-op(コープ)(生協。生活協同組合。消費生活協同組合)も、戦前からの産業組合(消費組合)を母体に、戦後(昭和23年)に制定された「消費生活協同組合法」に基づいて設立されました。

これらの組織は、お金や市場を絶対視する市場原理主義に抵抗し、「人を大切にすること」をモットーに、相互扶助の理念で運営されてきました。

上記の城南信用金庫(元・入新井信用組合)が、「人を大切にする」「地域を守る」という理念から、平成23年の「3.11原発事故」直後に「脱原発」を宣言したこと、そしていち早く実践したこと、これらの行動が不安に満ちた世情に、一条の光を差し入れたこと、それらを今も鮮烈に覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

資本主義の弊害(非人間的な差別構造、絶望的な格差、競争原理からの環境破壊や、天然資源の蕩尽など)を解消するため、労働者による資本家への働きかけ(労働運動)がなされるようになり、また、生産手段を社会化して格差の是正を目指す社会主義の思想も芽生えます。

クロポトキン
クロポトキン

「相互扶助」という言葉は、ロシアの思想家・クロポトキンが使い始めました。ダーウィンの進化論の「生存競争」「適者生存」「自然淘汰」といった理論が、「資本家」が「労働者」を利用・支配・搾取することや、軍事大国が他の国を支配・蹂躙することに、お墨付きを与えてきました。クロポトキンは、そういった進化論の一側面がいたずらに強調されることに警告を発し、人には「相互扶助を欲する社会的本能」があるとし、人々が自発的に助け合う社会を提案しました。小規模、中規模、大規模の相互扶助がなされれば、強大な権力などいらないと考えるのが「アナキズム」(無政府主義)です。

アナキズムを生活・社会に完全に適用するのは難しいとしても、資本主義でボロボロになりつつある地域・社会・地球には、アナキズム的発想(相互扶助的な発想)がもっともっと必要です。

ちなみに、クロポトキンの影響を受けた幸徳秋水も、大杉 栄も、当局により殺害されました(「明治43年の大でっち上げ事件」(俗称「大逆事件」)→ 「大杉 栄ら計3名殺害事件」(俗称「大杉事件」「甘粕事件」)→)。帝国主義や権威主義の敵と考えられたのでしょう。

吉原 毅 『信用金庫の力 〜人をつなぐ、地域を守る〜(岩波ブックレット) 』。城南信用金庫の理事長(平成27年より相談役)の吉原氏が、信用金庫の歴史と理念を熱く語る 平井りゅうじ、北見けんいち『まいど!南大阪信用金庫(1)』(小学館)。信金マンの「なかやん」。成績はパッとしないけど、困った人を助けたい気持ちは人一倍
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中谷 巌『資本主義はなぜ自壊したのか 〜「日本」再生への提言〜(集英社文庫)』。資本主義がもたらした、格差の拡大、環境破壊、資源獲得競争にどう歯止めをかけたらいいのか クロポトキン『相互扶助論(〈新装〉増補修訂版)』(同時代社)。訳:大杉 栄。「アナキズム(無政府主義)?、きゃー恐い!」の人が読んだら、頭の中がひっくり返るかも?
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■ 参考文献:
●『大田区史年表』(監修:新倉善之 東京都大田区 昭和54年発行)P.430 ●『信用金庫の力 〜人をつなぐ、地域を守る〜(岩波ブックレット)』(吉原 毅 平成24年初版発行 平成28年発行9刷参照)P.6 ●「相互扶助」(横山和彦)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録コトバンク→ ●『詳説 世界史研究』(編集:木下康彦、木村靖二、吉田 寅 山川出版社 平成20年初版発行 平成27年発行10刷参照)P.330-331、P.363 ●『加納久宜子爵 その生涯と功績 〜協同組合の歴史と意義〜』(編集:城南信用金庫加納公研究会(吉原 毅、山藤公一、安井 稔、栢沼雄二、篠原 稔、佐々木嘉哉、笠原喜則 平成26年初版発行 平成30年発行改訂版参照)P.3-8、P.18-20 ●「農業協同組合」(武内哲夫)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録コトバンク→ ●「消費生活協同組合」(森本三男)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録コトバンク→ ●「消費組合」※「百科事典マイペディア」(平凡社)に収録コトバンク→

※当ページの最終修正年月日
2023.7.18

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