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なぜ金閣は燃えたか(昭和25年7月2日、金閣寺燃える)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川端龍子作「金閣炎上」より ※「パブリックドメインの絵画(根拠→)」を使用 出典:「川端龍子(現代日本の美術)」(集英社)

 

昭和25年7月2日(1950。 の雨降る未明、京都金閣寺(京都市北区金閣寺町1 map→)が、同寺院の見習い僧侶だった林 養賢(21歳)の放火により炎上。 金箔を貼りつめた三層の舎利殿をはじめ、足利義満の木像、運慶の観音菩薩像、阿弥陀如来像、経文など、国宝を含む数々の文化財が灰に帰します。林はその後自殺を図りますが一命をとりとめます。

事件を知った林の母は、山陰本線の車中から保津峡(京都府亀岡市保津町保津山 map→に身を投げました。

林はその動機を「世間を騒がせたかった」「社会への復讐」と供述。重度の吃音症で、病身でもあり、母親から過大に期待されていて、寺のあり方にも疑問もあり、それらが複雑に絡み合って犯行に及んだとされます。

三島由紀夫

6年後の昭和31年、三島由紀夫(30歳)が、小説 『金閣寺』 で、 精緻を極めた描写で林の心理に迫ります。

青春期のコンプレックスと苦悩の実感をかっちりした美的な文体で構築、読者を震え上がらせました。

最初に金閣を見たときのことを、

・・・しかし私は、わざと少年らしく(私はこんな時だけ、故意の演技の場合だけ、少年らしかつた)、陽気に先に立つて、ほとんど駆けて行つた。そこであれほど夢みてゐた金閣は、大そうあつけなく、私の前にその全容をあらはした。・・・

と書いて、自意識に目覚め始めた少年の屈折した心理をあばきます。

吃音症からくる苦悩は、

・・・私の感情にも、吃音があつたのだ。私の感情はいつも間に合はない。・・・

と端的に表現。林の心理の考察を通し、三島は自身のなかに同類のものを見出しているのではないでしょうか。そうとしか思えないほどのリアリティです。

「私」は「私」を蔑んだ村の娘の“美”が剥奪されることを願いますが、娘は“美”を貫いて死んでゆきます。また“美”そのものだった金閣が空襲で焼けることを夢想しますが、戦争も終わる・・・

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水上 勉

水上 勉みずかみ・つとむ が生まれた福井県大飯郡本郷村(現・おおい町 map→)は、林が生まれた京都府成生なりゅう map→から20kmほどの場所で、水上は昭和19年春から昭和20年秋まで郷里の分教場で助教師をしていた頃、夏休みで成生に戻っていた中学生の林と顔を合わせたようです。また、家が貧しかったため、林と同様寺に修行に出されたこともありました。そんなこともあって、この事件に関心を持ち、取材を重ね、昭和54年(60歳)ノンフィクション 『金閣炎上』 を書き上げます。事件の一次史料とされているとのこと。

水上には、同事件を題材にし、自身の体験を重ね合わせた『五番町夕霧楼ごばんちょう・ゆうぎりろう 』という小説もあります。

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川端龍子

川端龍子(65歳)も、事件後すぐに燃える金閣寺を描き始め、2ヶ月後の青龍展で 「金閣炎上」 を発表しています(上掲イメージ参照)。 闇と炎のコントラストが印象的。

三島由紀夫 『金閣寺 (新潮文庫) 』 「炎上 [DVD]」。原作:三島由紀夫『金閣寺』。監督:市川 崑。出演:市川雷蔵、仲代達矢、中村玉緒、新珠三千代ほか
三島由紀夫 『金閣寺 (新潮文庫) 』 「炎上 [DVD]」。原作:三島由紀夫『金閣寺』。監督:市川 崑。出演:市川雷蔵、仲代達矢、中村玉緒、新珠三千代ほか
「金閣寺 [レンタル&購入]」。原作:三島由紀夫。出演:篠田三郎、柴 俊夫、市原悦子、加賀まりこほか 「オペラ「金閣寺」(CD)」。作曲:黛 敏郎。指揮:岩城宏之。演奏:日本フィル
「金閣寺 [レンタル&購入]」。原作:三島由紀夫。出演:篠田三郎、柴 俊夫、市原悦子、加賀まりこほか

「オペラ「金閣寺」(CD)」。作曲:黛 敏郎。指揮:岩城宏之。演奏:日本フィル

水上勉 『金閣炎上 (新潮文庫)』 水上 勉『五番町夕霧楼』
水上 勉 『金閣炎上 (新潮文庫)』 水上 勉『五番町夕霧楼』
「五番町夕霧楼 [DVD] 」(東映 昭和38年公開)。原作: 水上 勉 、出演:佐久間良子、川原崎長一郎ほか 「五番町夕霧楼」 [DVD] (松竹 昭和55年公開)。原作: 水上 勉 、出演:松坂慶子、奥田瑛二ほか

「五番町夕霧楼 [DVD] 」(東映 昭和38年公開)。原作: 水上 勉 、出演:佐久間良子、川原崎長一郎ほか

「五番町夕霧楼」 [DVD] (松竹 昭和55年公開)。原作: 水上 勉 、出演:松坂慶子、奥田瑛二ほか
酒井順子『金閣寺の燃やし方 (講談社文庫)』。「金閣寺焼失事件」について書いた対照的2作家、三島由紀夫と水上 勉。それぞれの人物と作品から見えてくるもの
酒井順子『金閣寺の燃やし方 (講談社文庫)』。「金閣寺焼失事件」について書いた対照的2作家、三島由紀夫水上 勉。それぞれの人物と作品から見えてくるもの

■ 馬込文学マラソン:
三島由紀夫の『豊饒の海』を読む→

■ 参考文献:
・ 『川端龍子(現代日本の美術13)』
 (集英社 昭和51年発行) 図版31、図版32、P.120-121

■ 参考サイト:
ウィキペディア/鹿苑寺(金閣寺)(平成25年4月5日更新版)→
ウィキペディア/金閣寺放火事件(平成30年6月17日更新版)→
ウィキペディア/アプレゲール(平成26年11月25日更新版)→
ウィキペディア/金閣寺(小説)(平成25年3月21日更新版)→
ウィキペディア/ミシマ「ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ」(平成27年5月30日更新版)→
ウィキペディア/水上 勉(平成30年6月10日更新版)→
ウィキペディア/五番町夕霧楼(平成30年5月5日更新版)→

東京紅團/三島由紀夫と水上勉の「金閣寺」を歩く 舞鶴編(下)→

※当ページの最終修正年月日
2018.7.2

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