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昭和24年4月27日(1949年。 、三島由紀夫(24歳)が『仮面の告白』を脱稿しました。 官僚系エリートの家系に生まれ、自身も2年前の昭和22年(22歳)、大蔵省入りしながら、そこを退いて、この一作にかけたのでした。
この作品で三島がやろうとしたことを一言でいうと「自己解剖」。自身の性的遍歴(初めてオナニーした時のことなど)や性的傾向まで赤裸々に吐露し、「この作品を読んだあと、私の小説をもう読まぬといふ読者もあらはれよう(川端康成あて書簡)」との覚悟でした。ウケ狙いで書くといった生ぬるいものではなく、書かざるを得ない差し迫った“自身の問題”に真正面から向き合うために書いたのでした。三島は書くに当たって心理学者や精神病理学者の意見もきいています。 同作で告白される性的傾向には「同性愛」が含まれていました。現在よりもさらに偏見が強かった時代に、この年齢にしてよく書けたものです。 ・・・「ふん、子供みたいな手袋をしていやがる」 同性愛的傾向は特別なことではありません。 稲垣足穂は、『少年愛の美学』(Amazon→)というより直接的なタイトルの本を書き、古今東西の少年愛に言及しました。足穂によると、A(アヌス=肛門)感覚こそが根源的で、V(ヴァギナ=女陰)感覚とP(ペニス=男根)感覚は福次的。 吉屋信子も同性への愛を貫きました。初期の『花物語』(大正5年〜。20歳〜)、『屋根裏の二処女』(Amazon→)(大正8年。23歳)から、晩年の『女人平家』(Amazon→)(昭和46年。75歳)にいたるまでの吉屋の作品はどれも、女性同士の友愛に裏打ちされています。私生活でも、大正12年(27歳)、門馬千代という無二の友を得て、3年後から同居、終生仲良く暮らしました。 折口信夫も同性を深く愛しました。中学3年の頃から同級生を思慕し、小説『死者の書』(Amazon→)を書く動機にもなったようです。男性の弟子を対する、精神的かつ肉体的な深い情愛も知られています。 生まれた時に判断された性別(法律上の性別)、自分をどの性と認識しているか(性自認)、どういった対象に恋愛感情・性的欲求を感じるか(性的指向)、どういった性的な振る舞いをするか(性表現)、は「男性」「女性」「中性」のどれか1つに立脚できない場合も多く、その中間的な状態や感情を持つ人も多く、その状態と感情は切れ目ないグラデーションをなすようです。その時々の状況にも大きく左右されることでしょう。LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニング)の旗(レインボーカラー)は、それぞれが個性(色)を持ちつつもそれぞれが連続的に存在していることを表しているのでしょう。 性器の形状も「男性」「女性」と明確に分けられないケースがあり、例えば、一般的なペニスとクリトリスの中間の形状の性器もあるようです。 近年、染色体の研究者から、驚くべきことが報告されています。将来「男性」がいなくなるかもしれないというのです。どういうことかというと、「男性」だけにあるY染色体(「男性」を作る染色体)が、年々壊れているとのこと。かつてはY染色体に推定1,500個ほどの遺伝子があったのに、現在では機能している遺伝子が30個ほどまでに激減しているそうです。100万年に5個の遺伝子が失われてきたようなので、その計算だと、あと500〜600万年すると「男性」がいなくなるかもしれないというのです。関連して一回の射精の精子量も減り、精子の運動能力も低下。この傾向は、都市化・近代化が進んだ地域に顕著で、要因として、食品添加物、塗料やコーティング材に含まれる内分泌撹乱物質、農薬などの化学物質、電磁波、放射線、ストレス、肥満などが考えられています。 人類の根源的な問題として、一夫一婦制といった安定的な結婚形態も、“精子レベルでの競争”が行われなくなることによって、精子の能力の低下の原因と考えられます。だからといって、今更チンパンジーのように乱婚にすべきというのは論外でしょう。また、福祉社会は競争が少なくなって精子の劣化に繋がるとしてそれも否定する優性論者(「左翼は睾丸が小さい」との発言も)がいるようですが、全ての人が平等な権利を有するとする民主主義の考えに反します。やっていけることをやっていくしかありません。 「男性」の女性化は、上のような理由から、ある意味“自然なこと”なので、性もどんどん多様化していくことでしょう。子どもが生まれづらくなって少子化が進むかもしれません。少子化によって乗り越えなくてはならないことも多々あるのでしょうが、人類も小商いにしていく方向性もあるかもしれません。その方が自然に優しいだろうし(人類は自然を壊し過ぎました)。
■ 馬込文学マラソン: ■ 参考文献: ※当ページの最終修正年月日 |