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広告、あるいは宣伝について(昭和47年3月12日、モスバーガーの1号店、オープンする)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昭和47年3月12日(1972年。 、「モスバーガー1号店」が 成増なります (東京都板橋区成増二丁目15-10 map→ ※現在の店舗の位置は最初の店舗の位置と少し異なるようだ)にできました。

モスバーガー(以下モス)は、素材を厳選し、注文を受けてから作る「アフターオーダー方式」を採用、低価格と速さを重視するマクドナルドとの違いを打ち出しました。「日本発のハンバーガーショップを」との志もあったことでしょう。翌昭和48年発売のテリヤキバーガーが大ヒットし、全国展開し、そして13年経過した昭和60年頃、250店舗を突破、モスがより“モスらしく”なってきます。

その頃(昭和60年頃)から、モスの宣伝に宮田 さとる (ドラフト代表)が関わっています。モスの創業者の櫻田 さとし (岩手県大船度市出身。当地(東京都大田区)の「(東京都立)大森高等学校」(西蒲田二丁目2-1 map→)出身)が、宮田の斬新な広告をみてアプローチしたようです。SとS(「さとる(識)」と「さとし(慧)」)の出会いですね。櫻田の「本部は加盟店の面倒を一生みる」との言葉が(モスはフランチャイズ)、宮田を動かしたようです。

宮田が提案した「テレビ、タレント、プレミアム(おまけや景品)を使わない」といった宣伝方法は、モスの当初からの「商品と店の力で勝負する」(実質で勝負)といった方針と合致しました。浮いた家賃(モスは当初から「路地裏経営」の方針を取っていた)や宣伝費は、良質な素材や「食べながら読めるトレイマット」「モスモス(フリーペーパー)」などに生かされ、食べる場であることにとどまらず、行けば「何か発見がある場」となりました。平成9年に櫻田が60歳で急逝、その3年後(平成12年)まで宮田はモスに関わったとのこと。

現在はどうだか知りませんが初期の頃のモスの宣伝(広告)方法”は卓越したものでした。その企業の“良さ”が伝わるのに時間がかかるかもしれませんが、急がば回れで、結局は地道に実質中心で伝えていくのが確実なのでしょうね。ブームに乗って、広告会社に指南された方法で、一時はパッと売れても、数年で(あるいは数ヶ月で)寂れる店(企業)をたくさん目にしてきました。

広告は、短時間に多数の人に影響を与え、多数の人を動かすので、注意が必要です。多くの人が注目する人物(例えばタレント)や多くの人に「カワイイ〜」とかいわれるキャラクターに、「日本を守るために一人一人が血を流そうね〜♡」とか語りかけられたら、ついその気になってしまいますよね? 危険が指摘され続けているのに、原発が推進され続けているのも、ひとえに広告の力。莫大な利権と多数の関係者の生活が紐づいているので、これからも様々な方法で広告してくることでしょう(そして、また何かあって、また「想定外」?)

子ども」も広告によく利用されます。「子ども」は人々に好ましい印象を与えることが多く、「子ども」に囲まれているだけで「いい人」に見えてしまうという罠があります。その効果を巧みに利用したのが、子どもを含め大量に殺戮したナチス。 本質を隠すために広告が利用されることがあるので注意が必要です。

ナチスもそうですが、人間心理の壺(弱点)を突いて、人を動かそうという発想自体下劣なものです(こういう方法を「頭がいい」ものと考えるアホがいる。そのアホさを売りにする超絶アホも)。『人を動かす』という本がベストセラーになりましたが(今も売れている?)、「人を動かしたい人」はいたとしても(「人を動かしたい」などとは恥ずかしくって人に言えませんね?)、果たして「人に動かされたい人」などいるでしょうか?(案外いるか・・・、“自由からの逃走”・・・)

ヒトラーの後継者と目されたヘルマン・ゲーリングが次のように言っています。

・・・国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。簡単なことだ。自分達が外国から攻撃されていると説明するだけでいい。そして、平和主義者については、彼らは愛国心がなく国家を危険に曝す人々だと公然と非難すればいいだけのことだ。この方法はどの国でも同じように通用するものだ。・・・

「子ども」を利用して“優しいおじさん”を演出中のヒトラー ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:『我が闘争』(ヒトラー)(第一書房 昭和16年) そんなヒトラーの影響力を利用する近衛文麿 ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:Twitter/山崎雅弘/勝田龍夫『重臣たちの昭和史(上)』(文藝春秋)を開いたら・・・→
「子ども」を利用して“優しいおじさん”を演出中のヒトラー ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:『我が闘争』(ヒトラー)(第一書房 昭和16年) そんなヒトラーの影響力を利用する近衛文麿 ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:Twitter/山崎雅弘/勝田龍夫『重臣たちの昭和史(上)』(文藝春秋)を開いたら・・・→

公共性」を利用した広告も無批判に広がってきています。公共事業の民営化が加速し、公と私(企業)との区別がつかなくなっているのでしょうか。公務員の給与票の裏面に企業の広告がしらっと掲載されているのには驚きます。自治会がスポンサーを募り、「地域を愛するスポンサー」などと紹介するのも問題です。

皇室」も昔から広告(自分らの考え方を広めること)に利用されてきました。勅令を引き出したり、偽造したり、天皇をかつぎあげたり皇室に対する「不敬罪」で異議ある者たちを弾圧したり。天皇は敗戦後から今日にいたるまで、戦前の過ちを振り返って反省し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」(「日本国憲法」前文より)する覚悟と願いを常にお持ちで実践してこられたと思います。「皇室」を広告に利用しようとする人たちの多くが、「皇室」のその平和志向と真逆の考えなのが不思議です。彼らは「皇室」を利用するだけで、天皇や「皇室」のことなどは尊敬も尊重もしていないのでしょうね。

広告暴力」という言葉があります。電車内や駅を埋め尽くす単一広告に視界を乗っ取らる不気味さと不快。昔ながらの商店の前に同類の商店がデカデカと派手な看板を掲げる浅ましさ。声が大きなもの、振る舞いが派手な人たち、自称イケメン、自称美女たち、奇抜な言動の人たちがのさばる美しくない世界。人を殴るだけが「暴力」ではありません。

当地(東京都大田区)の海老取川(シン・ゴジラが遡った川)沿いに並んだ巨大看板の骨組み。羽田空港の利用者向けの広告を掲示する看板で、民家には尻を向けている。看板の背後には、羽田空港を拡張するときに追い出された人々も住む 当地(東京都大田区)の海老取川(シン・ゴジラが遡った川)沿いに並んだ巨大看板の骨組み。羽田空港の利用者向けの広告を掲示する看板で、民家には尻を向けている。看板の背後には、羽田空港を拡張するときに追い出された人々も住む

20世紀は「広告の世紀」と呼ばれます。広告を通して、人びとは自転車やラジオやテレビや冷蔵庫や車などに憧れ、それを求め、また、広告を通して、まだ見ぬ場所に憧れて世界中を飛び回りました。一通りはモノがゆきわたって、一通りは各地の情報もゆきわって21世紀。やれ作れ、やれ消費せよ、やれ海外旅行へ、の時代はとうに終わりました。SDGs(エス・ディー・ジーズ。Sustainable Development Goals。地球上の全ての人間(全ての生物も?)が今後も生永らえるための方策)の推進も待ったなしです。人類が地球を壊し続けると(原発もリニアも飛行機増便も皆「地球壊し」)、じきに「Tipping Point」(ティッピング・ポイント)Tip:倒れる。後戻りできない地点)を迎えると言われています。

と、そんな現在、広告はどうあるべきでしょう?

藤崎圭一郎『デザインするな ~ドラフト代表・宮田 識~』(DNPアートコミュニケーション)。デザイン・広告を志す人・興味ある人にお勧め。宮田はスタッフに「デザインするな」と言う。広告手法を悪用するなということだろうか。作品図版も多数 天野祐吉『広告論講義』(岩波書店)。十大広告(パリ万国博覧会、南極探検隊員募集広告、エンゼルと福助、T型フォード、ヒトラー、スモカ歯磨、フォルクスワーゲン、アンクルトリス、NASA、日清カップヌードル)を通して「広告の時代」(20世紀)を読み解く
藤崎圭一郎『デザインするな ~ドラフト代表・宮田 識~』(DNPアートコミュニケーション)。デザイン・広告を志す人・興味ある人にお勧め。宮田はスタッフに「デザインするな」と言う。広告手法を悪用するなということだろうか。作品図版も多数 天野祐吉『広告論講義』(岩波書店)。十大広告(パリ万国博覧会、南極探検隊員募集広告、エンゼルと福助、T型フォード、ヒトラー、スモカ歯磨、フォルクスワーゲン、アンクルトリス、NASA、日清カップヌードル)を通して「広告の時代」(20世紀)を読み解く
能川元一、 早川タダノリ『憎悪の広告』(合同出版) 『電通の正体(新装版)』(金曜日)。著:「週刊金曜日」取材班
能川元一、 早川タダノリ『憎悪の広告』(合同出版) 『電通の正体(新装版)』(金曜日)。著:「週刊金曜日」取材班

■ 参考文献:
●『デザインするな ~ドラフト代表 宮田 識(さとる)~』(藤崎圭一郎 DNPアートコミュニケーションズ 平成21年初版発行 同年発行3刷参照)P.79-101 ●『広告講義』(天野祐吉 岩波書店 平成14年発行)P.3-32 ●「私たちは岐路に立っている」( 国谷裕子 くにや・ひろこ )※「世界」(岩波書店)令和元年12月号に掲載

※当ページの最終修正年月日
2023.3.12

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