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小沢昭一 |
俳優で芸能研究家の小沢昭一は、当時、近くに住んでいて、この火事を目撃しています。9歳の時で、遊び盛りですね。後年、下のような文章を書いています。
・・・大きなテントが建てられ、ライオンやトラや象などの動物も運び込まれて、私ども子供は興奮しました。
親がそのうち観せてやると言ってくれたものの、早く中へ入って観たいのです。近くの神社の森でターザンごっこをしている時も気になって、木の上から町の屋根ごしにサーカスのテントを眺めていましたら、テントのてっぺんに飾られている万国旗の綱が切れて、パッと煙が上るのを私は目撃したのです。・・・(小沢昭一『あたく史 外伝』(Amazon→)より)
小沢は東京都杉並区
文中の「近くの神社」は「
この火事で小沢少年の心に残ったのは、動物のこと。火から逃れようとして象は、鎖がつながる柱を鼻で叩き割って、足に鎖をつけたまま通りを逃げたそうです。その後捕まって電信柱につながれた全身火傷の象の悲しい目。ライオンなどの猛獣は射殺されたようです。特に、燃えるテントから逃げ出たカンガルーが、火事を見に集まった人間の気配に怯えてか、また燃えるテントに戻っていった姿は、後々まで小沢の心に焼き付いて離れなかった。「 サーカス(芸能活動)の華やかさと悲哀」。それを目の当たりにしたことが、小沢の進路を決定したのではないでしょうか。
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リズリー |
サーカスは古代エジプト時代からあったようですが、日本では、幕末(1864年。江戸城明け渡しの4年前)、横浜の外国人居留地で興行された「アメリカ・リズリー・サーカス」が最初のようです。興行主のリズリーは、「リズリー・アクト」(横たわって足で子どもをジャグリングする)の創始者。最初は人が集まったようですが、場所が場所だったので長続きはせず、リズリーはサーカスを解散、生計を立てるために牛乳や氷を販売したり(日本で最初に牛乳・氷を販売した人物とされる)、日本の芸人を集めて「帝国日本芸人一座」(Imperial Japanese Troupe)を作って米国公演したりと、ユニークなことをしています。
明治になって「開国」したと思っている人もいるかもしれませんが、国を開いたのは幕府です。幕末からユニークな外国人たちが日本で活躍しています。
日本人が作ったサーカスのはしりは、明治32年に山本
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中原中也の詩で真っ先に「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」(タイトルは「サーカス」)を思い浮かべる方も多いでしょう。「幾時代かが」あって、「茶色い戦争」もあって、冬には「疾風」も吹いて、外は「
今夜
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
中也が生前に出した唯一の詩集『
観客様はみな
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チャップリン |
昭和3年に公開された「サーカス」というチャップリン(38歳)の映画があります。大正14年の「黄金狂時代」(チャップリン36歳)と、昭和6年の「街の灯」(チャップリン41歳)の間に撮られた大作です。映画製作自体がサーカスの綱渡りのようで、デイヴィッド・ロビンソン(チャップリン研究の権威)はこの映画を「完成にこぎつけたこと自体が驚異」と表現しました。撮影直前に滅多にない嵐でサーカス・テントのセットが壊れ、また、クランクインから1ヶ月ほどして、ラボのミスでそれまでに撮影した全てのフィルム(多くのエキストラを使った大掛かりなカットを含む)に傷があることが判明して全て撮り直しとなり、クランクインから9ヶ月ほどもして、火災でセットの全てを失いました。さらには、妻リタ・グレイの親族が財産目当てに干渉し始め、撮影途中に離婚訴訟までありました。そんな中でもチャップリンは、スタントなしの“命がけの笑い”にチャレンジ、サーカスの綱を700回以上も渡り、調教が不十分なライオンの檻に200回ほども入って(映画の中の恐怖の表情は演技でなかったとか)、この映画を完成させています。「サーカス」の撮影中、蒲田の監督・
三島由紀夫が大蔵省に勤めていた頃(昭和23年。22歳)、『サーカス』(Amazon→)という原稿用紙50枚の作品を発表しています。綱渡りの綱から足を踏み外して落下する少女を、馬に乗った少年が抱きとめるはずでしたが・・・。毅然と生きる少年・少女と、それを密かに妬む大人たち。
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| 『サーカスの時間』(河出書房新社)。5年にわたって撮られたサーカスに生きる人々。写真・エッセイ:本橋成一。小沢昭一とヘンリー・安松との対談も | 亀井俊介『サーカスが来た! 〜アメリカ大衆文化覚書(平凡社ライブラリー)』。大衆文化とエリート文化との、相克と相互影響 |
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| ミヒャエル・エンデ『サーカス物語 』(岩波書店)。イラスト:司 修。翻訳:矢川澄子 | 「サーカス」。監督・出演:チャップリン ●The Lion Cage→ ●The Mirror Maze→ |
■ 馬込文学マラソン:
・ 中原中也の「お会式の夜」を読む→
・ 三島由紀夫の『豊饒の海』を読む→
■ 参考文献:
●『大田区史年表』(監修:新倉善之 東京都大田区 昭和54年発行) P.467 ●『あたく史 外伝(新潮文庫)』(小沢昭一 平成17年発行)P.55-59、P.70-74 ●「蒲田少年 小沢昭一とこころのふるさと」(大田観光協会展示資料 監修:シネパラ蒲田実行委員会 デザイン・レイアウト:村上多恵子) ●『チャップリン ~作品とその生涯~(中公文庫)』(大野裕之 平成29年発行)P.177-194 ●「シバタ大サーカス」(やぶからす)(緑の谷・赤い谷→)
※当ページの最終修正年月日
2024.3.18