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坂本 武 |
座長の喜八を演じたのが坂本 武です。不良な感じから、温かで誠実な感じ、ぶっ飛んだおちゃらけまで演じ切る俳優です。坂本は小津監督の「出来ごころ」「箱入娘」「東京の宿」にも「喜八」という名で登場、この4作品は「喜八もの」と呼ばれ、坂本の代表作となりました。「浮草物語」は「喜八もの」の第2作です。
坂本は、明治32年、赤穂浪士が故郷・兵庫県赤穂の漁師の家に生まれました。尋常高等小学校卒業後、時計屋に勤めていた時、近所で天勝一座の公演があり、舞台からの呼びかけに応じて奇術の相手をして拍手喝采を受け、自分の芸人としての才能に気づいたようです。22歳で地方巡業の一座に身を投じますが、しばらくして一座は解散(上述の映画「浮草物語」を思わせる)。松竹の加茂撮影所(京都)へ仕事をもらいにいった時、たまたま高い所から飛び込む演技を俳優たちが尻込んでいました。坂本が即座に買って出て、やってのけて、採用となります。
加茂時代は役らしい役がつきませんでしたが、大正14年加茂撮影所が閉鎖されて蒲田撮影所に移ってからは、清水 宏監督、斎藤寅次郎監督、小津督監らから次々に声がかかり、地位を不動にしました。キワモノ映画「
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三井秀男 |
「浮草物語」では、息子役の三井秀男(後の三井弘次)が色を添えています。
三井は横浜の戸部生まれ。大正13年、慶大在学中に蒲田撮影所に入所し、「与太者シリーズ」(昭和6-10年)で人気を博しました(最上部の写真の剣道着に鉢巻の人物)。戦後は、渋谷 実監督の「気違い部落」や、黒沢 明監督の「どん底」などに出演し、演技派として鳴らしました。
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小日方 伝 |
「喜八もの」の第1作の「出来ごころ」で、坂本(喜八)はビール工場の職工として登場、
小日方は明治40年、福岡小倉生まれ。東京府立園芸学校に学び、メロン作りに意欲を燃やしていましたが、同僚の紹介で、昭和4年日活に入社しました。知性と野性味を兼ね備えたキャラクターで有望視されます。松竹蒲田への入社は昭和8年(24歳)、五所平之助監督の「伊豆の踊り子」の学生役と、島津保次郎監督の「隣の八重ちゃん」で逢初夢子と岡田嘉子から好かれる役をこなして(最上部の写真の右上の左向きの人物)、一躍トップスターに。戦後、妻の松園延子(蒲田の女優だった)とブラジルにわたり、大農場経営にチャレンジしています。
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竹内良一 |
「喜八もの」の第3作の「箱入娘」で、坂本(喜八)は隣の煎餅屋として登場、隣の母子家庭の娘の思い人を竹内良一が演じます。母は、生活を考えて娘を木綿問屋に嫁がせようとし、娘も母の思いを汲んで結婚話が進んでいきますが・・・
竹内は明治36年、東京赤坂生まれ。大正15年に日活に入社しますが、「椿姫」を撮影中、岡田嘉子と逃げ出して大問題となり、2人して日活はクビ(「椿姫」は未完となる)。昭和6年(28歳)、岡田と一緒に蒲田撮影所に入社しました。昭和7年の「坂田山心中」を題材にした「天国に結ぶ恋」で主演し、一躍スターとなります。「坂田山心中」の男性は華族出身の慶大3年生。竹内も男爵家の嫡子だったのでぴったりでした(「椿姫」の件で廃嫡となったが)。
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笠 智衆 |
「喜作もの」の最終作(第4作)の「東京の宿」で、坂本(喜八)は妻と別れ2人の息子を持つ男やもめとなり、娘の入院費用を稼ぐために酌婦(売春もする)になった女(演:岡田嘉子)のために盗みを働きます。
あと、蒲田の男優には、日活から引き抜かれたトップスターの鈴木伝明、喜劇俳優としても活躍した斎藤達雄(小津の名作サイレント「生まれてはみたけれど」で主演)、
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| 「浮草物語」。活弁:松田春翠。蒲田では3年前(昭和6年)からトーキー映画が作られるようになったが、小津はまだサイレントにこだわった | 「出来ごころ」。活弁:松田春翠。「喜八もの」の第1作。子役ながらここでも突貫小僧が大活躍(大暴れ)。この頃の小津作品で欠かせない存在だ |
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| 「東京の合唱」「淑女と髭」。共に蒲田時代の小津監督作品。両作とも岡田時彦、斎藤達雄、坂本 武が出演。小津の喜劇的センスが光る | 「その夜の妻」「非常線の女」。これらも蒲田時代の小津監督作品。「その夜の妻」には岡田時彦、「非常線の女」には岡 譲司が出演。蒲田の二枚目スターだ |
■ 参考文献:
●『人物・松竹映画史 蒲田の時代』(升本喜年 平凡社 昭和62年発行)P.91-92、P.208-225、P.288-289 ●「坂本 武」(吉田知恵男、司馬叡三)、「大日方 伝」(盛内政志)※『日本映画人名事典 男優篇(上巻)』(編:掛尾良夫 キネマ旬報社 平成8年発行)に収録 ●「三井弘次」「竹内良一」※「新撰 芸能人物事典(明治~平成)」(日外アソシエーツ 平成22年発行)(コトバンク→)(コトバンク→) ●『炎の女の70年 〜フォト・ドキュメント・岡田嘉子〜』(編:有城三朗 平河出版社 昭和48年発行)P.191-193 ●「笠 智衆」※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録(コトバンク→)
※当ページの最終修正年月日
2023.11.22