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明治31年2月5日(1898年。
尾﨑士郎が愛知県
「忠臣蔵」は、寛延元年(1748年)、大阪竹本座で初演された義太夫浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」を略したもの。題材になったのは、45年ほど前の「
内匠頭が幕府から切腹を申し渡されたのは、江戸城の「松の廊下」で上野介に斬りつけたからです。幕府と朝廷は毎年年賀の挨拶の使者を交換しており、勅使を丁重に迎えるのは幕府の一大行事でした。その年(元禄14年・1701年)の勅使饗応役が内匠頭だったのです。赤穂藩は新田開拓、塩田事業、水道事業(世界で初めて上水道を設置)に成功しており経済的に余裕があると思われており、勅使饗応役にさせられます(接待費用は全て勅使饗応役の藩の負担)。かたや上野介は、
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| 皇居(江戸城跡。東京都千代田区千代田1-1 Map→)の「松の廊下」跡。ここで、内匠頭の怒りが爆発、上野介を切りつけた。内匠頭には「
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内蔵助以下47名は上野介の首を
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| 泉岳寺にある |
47人のお墓にお参りしていたら、大轟音。仰ぎ見ると、内蔵助もビックリの低空飛行。元禄時代にも負けぬ「金」(経済)の世になったか・・・ |
吉良で生まれ育った尾﨑の話に戻すと、吉良の地では、上野介は慈悲深い名君だったのです。治水事業や新田開拓でも功績がありました。吉良の人々には、“よい殿様”をテロまがいで殺した「赤穂浪士」こそ“悪い奴”だったのです。
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| 左は明治の終わりくらいから吉良町(横須賀村)で作られた玩具。吉良上野介を象ったもの。右は吉良像。ともに吉良邸跡(東京都墨田区両国三丁目13-9 map→)の屋外展示より | |
尾﨑は、半自叙伝『人生劇場(青春篇)』(Amazon→)の冒頭で、そういった吉良の人々の意識に触れています。
・・・吉良
まったく「あいつは『吉良』だ!」ということになると旅に出てさえ肩身の狭い思いをしなければならなかった時代があるのだ。しかし、そうなれば、こっちの方にも(忠臣蔵なんて高々芝居じゃねえか)、──という気持がわいてくる。(うそかほんとかわかるものか、あんなものを一々真にうけてさわいでいるろくでなしどもから難癖をつけられているうちのおとのさまの方がお気の毒だ)──
三州横須賀は肩をそびやかしたのである。相手にしないならしなくてもいい。そのかわり日本中の芝居小屋で「忠臣蔵」がどんなに繁昌しようとも、この村だけへは一足だって踏み入れたら承知しねえぞ!・・・(尾﨑士郎『人生劇場(青春篇)』より)
吉良の人たちまで差別するとは愚かしい限りですが、今でもある国の為政者の“
そんな横須賀村(吉良)でも明治になって昔のことだからと「忠臣蔵」が演じられたところ、芝居の途中で内蔵助役が胃ケイレンで動けなくなったり、芝居小屋が火事になったりと災難が続きます。上野介の祟りに違いないと恐れ、慰霊祭が催され、芝居小屋の前にお堂がたち、そして、内匠頭を悪役にした舞台まで作られたとか(笑)。
「忠臣蔵=真実」でないのも確かでしょう。第一、今時、「忠」を声高に言う人の多くは「面倒見てやったのだから文句言うな」の
とはいえ、「上野介は悪者」といった“日本の常識”とは違った意識のある村に生まれ育ったことが、尾﨑の反骨精神に影響したのは確かでしょう。
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山鹿素行 |
ところで、赤穂浪士は、なぜにも、皆が志を貫いて目的を達し得たのでしょう?
江戸切っての学者・
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| 西山松之助『図説 忠臣蔵』(河出書房新社)。史実、浮世絵、歌舞伎など様々な角度から | 真山青果 『元禄忠臣蔵〈上〉 (岩波文庫)』。昭和16-17年、溝口健二が映画化→ |
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| 森村誠一『真説 忠臣蔵 (講談社文庫) 』。強硬派でのちに脱落して変節漢として伝わる高田郡兵衛を新解釈した『不義士の |
「忠臣蔵」。監督:渡辺邦男。出演:長谷川一夫、鶴田浩二、市川雷蔵、勝新太郎、京マチ子ほか。オールスター映画 |
■ 馬込文学マラソン:
・ 尾﨑士郎の『空想部落』を読む→
■ 参考文献:
●『評伝 尾﨑士郎』(都築久義 ブラザー出版 昭和46年発行)P.25-30 ●『人生劇場 青春篇(上)(新潮文庫)』(尾﨑士郎 昭和22年初版発行 昭和49年42刷参照)P.7-10 ●『忠臣蔵99の謎(PHP文庫)』(立石 優 平成10年発行)P.20-42、P.81-87、P.100、P.257-260 ●「忠臣蔵 ゆかりの地 港区(「港区歴史フォーラム」の案内)」(山本博文、岩下尚史)※「東京新聞」に掲載(平成29年12月22日) ●「山鹿素行」(佐久間 正)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録(コトバンク→)
※当ページの最終修正年月日
2023.2.5