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土方与志 |
前年(大正12年)の関東大震災で東京の文化は壊滅状態になりました。ベルリンで演劇を学んでいた
工事が始まったのは4月の終わりで、1ヶ月半ほどの工期でしたが、世界初の電気照明室、日本で初めての「クッペル・ホリゾン」(湾曲した背景や丸天井を照らす照明)、可動舞台などを導入、日本のみならず、世界最先端の劇場が誕生します。
土方は演劇運動の指導者でありながら、爵位があり資産家だったので今でいう億単位を劇場建設に投入。劇場、特に小劇場の経営を成り立たせるのは至難の技です。土方はパトロンでもあったのです。
「築地小劇場」は「演劇の実験室」として注目され、当時、「文学青年=築地(小劇場)ファン」といった勢いでした。高見 順は「築地小劇場」の機関紙に劇論を訳載するなど深く関わりました。宮沢賢治も大正15年の上京の際も、昭和3年の上京の際も足を運んでいます。
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| 「築地小劇場」の内部。建坪は80坪で一階建て。定員468名。緊密な空間設計で、座席によって差が出ないよう工夫されていた ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:『劇場の近代化』(思文閣出版) | 砲塔の中だけで繰り広げられる「海戦」の舞台。7人の水夫は、焦燥と恐怖にかられ、終いには・・・。観た者に忘れ得ぬ印象を残した1作 ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:『築地小劇場』(未来社) |
大正15年頃から劇団「築地小劇場」(「築地小劇場」附属の劇団)に変化が現れます。大きな存在だった
昭和4年に『西部戦線異常なし』が世界で話題になると、同年11月、劇団「築地小劇場」と「新築地劇団」がともに舞台化。反戦的な作品だったため政府から圧力がかかり、「新築地劇団」の脚本は1万字以上がカットされ、最後の幕はまるまるカット。その箇所で役者は口をぱくぱくさせるだけでしたが、割れんばかりの拍手と歓声があったそうです。
「新築地劇団」に勢いを削がれたからでしょうか、劇団「築地小劇場」は2年後の昭和5年に解散します。
昭和8年2月20日、小林多喜二(29歳)が特高警察に虐殺されると、「築地小劇場」で労農葬が開かれました(「築地小劇場」は多喜二が虐殺された築地署の所轄)。「新築地劇団」は翌月(3月)追悼公演として多喜二の「沼尻村 Amazon→」を14日間上演しました。東野英治郎(25歳)や滝沢 修(26歳)、薄田研二(34歳)、浜村 純(27歳)も舞台に立っています。演出家の岡倉司朗は稽古中検挙されました。
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| 「沼尻村」の舞台 ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:『築地小劇場』(未来社) |
昭和9年、村山知義(33歳)の呼びかけで、プロレタリア系の「中央劇場(「左翼劇場」の後身)」、「新築地劇団」の一部団員、「美術座」によって「新協劇団」が結成されます。以後、「新築地劇団」と共に「築地小劇場」の運営にあたり「新協・新築地時代」(「新新時代」))となります。
しかし、当局の弾圧は激しさを増し、劇場前に警察官が数十人ずらりと並んで入場者の身体検査ということもありました。「国体」に反するもの(と判断されたもの)を持っていようものなら、即検挙です。観劇する人にも覚悟が必要でした。
昭和15年は「皇紀2600年」に当たるとされ、記念行事が盛大に行われました。行事を拒否すれば当局からどんな嫌がらせがあるかしれません。劇団側は討論の末、行事に一枚噛むこととなりました。「新協劇団」は
昭和15年8月19日未明、警視庁は、どうにも我慢ならない演劇人の大量検挙に出ます。「新協劇団」と「新築地劇団」の主要メンバー100名以上が検挙されました。村山知義(39歳)、久保 栄(40歳)、滝沢 修(34歳)、秋田雨雀(57歳)、
ついに
演劇人は主体的な活動の場を失い(「日本移動演劇連盟」という国策団体ができ慰問巡演が盛んになる)、「築地小劇場」の建物も東京大空襲で失れました。
“築地”で育った演劇人は、戦後、圧政から解放されるや、演劇・映画・テレビシーンの一翼を担っていきます。映画「松川事件」には、宇野重吉、千田是也も出演。そりゃ、出演しますよね。
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| 菅井幸雄『築地小劇場』(未来社) | 神山 彰『近代演劇の脈拍 〜その受容と心性〜』(森話社) |
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| 『小劇場演劇とは何か (立教大学日文叢書)』(ひつじ書房)。編:後藤隆基 | 西村多美子『実存 〜1968-69状況劇場〜』(グラフィカ編集室) |
■ 馬込文学マラソン:
・ 高見 順の『死の淵より』を読む→
■ 参考文献:
●『築地小劇場』(菅井幸雄 未来社 昭和49年発行)P.7-17、P.32-35、P.72-77、P.104-113、P.147-150 ●『嬉遊曲、鳴りやまず 〜斎藤秀雄の生涯〜(新潮文庫)』(中丸美繪 平成14年発行)P.108、P.115-116 ●『劇場の近代化 〜帝国劇場・築地小劇場・東京宝塚劇場〜』(永井聡子 思文閣出版 平成26年発行)P.82-86 ●『築地小劇場史』(水品春樹 梧桐書院 昭和6年初版発行 昭和14年再版参照)P.199-200 ●『高見 順 ~人と作品~』(
※当ページの最終修正年月日
2024.6.13