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不完全な核実験制限(部分的核実験禁止条約)

フェアでなかった禁止条約(昭和38年8月5日、米国、英国、ソ連が「部分的核実験禁止条約」に調印)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昭和20年7月16日、米国によってなされた人類初の核爆発実験(「トリニティ実験」) ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典:ウィキペディア/核実験(平成28年4月1日更新版)→

 

昭和38年8月5日(1963年。 米国、英国、ソ連の3国が、「部分的核実験禁止条約」に調印しました。8月 5 日に調印がなされたのは、人類が初めて核爆弾を使用した昭和20年8月 6 を意識してのことでしょう。初の使用から18年が経とうとしていました。

前年の昭和37年、米国とソ連がキューバを巡って対立、核使用の一歩手前まで来ました(「キューバ危機」)。その教訓を踏まえ、米国のジョン・F・ケネディ大統領(46歳)の提案で、米ソ両国と英国で話し合いが持たれて同条約が結ばれ、計111か国が調印しました。

この条約は、大気中に放射性物質が飛散する「大気圏内核実験」を禁止するもので、「地下核実験」は除外されました。だから「部分的」なのです。「地下核実験」は変わらず行える内容でした。「地下核実験」の技術を持たないフランスと中国を含む十数カ国は、それを不公平として調印しませんでした。この条約によって核実験回数の全体数が仮に減って(下の動画によると必ずしもそうなっていないようです)、実験の安全性が高まったとしても、各国の実験数の差が広がることが懸念されました。

中国が態度を硬化した背景には、同じ共産圏のソ連との対立の表面化があります(「中ソ対立」)。スターリンの死後(没後10年)、フルシチョフ(69歳)が「平和共存」(資本主義圏と共産主義圏の共存)を押し進めますが、第三勢力のインドに接近していた中国には、それも「米ソ中心」のように映ったのでしょう。

米国は昭和36年から昭和37年にかけて「地下核実験」を行なっており、昭和38年までにソ連も「地下核実験」に成功。その直後の「部分的核実験禁止条約」ですから、米ソの「二極体制」が画策されたと考えられて当然。平成3年、米国が湾岸戦争に勝ち、同年ソ連が崩壊して、米国は「世界の警察」になったともされますが、今や、自ら「アメリカ・ファースト」を謳うくらいですから、失格ですね?

「部分的核実験禁止条約」に日本も調印しますが、同条約は国内にも、波紋と分断を招きました。

日本共産党は米ソに核が独占されるのを危惧して同条約の批准に反対、党内で賛成した志賀義雄(62歳)、鈴木市蔵(53歳)らを親ソ連派として除名しました。志賀らに同調したとして中野重治(61歳)も除名され、野間 宏(48歳)、佐多稲子(59歳)、国分一太郎(52歳)らは除名に反対したとして除名されています。

昭和29年の米国による水爆実験(「ブラボー実験」。ゴジラ誕生のきっかけになった)で多くの被爆者が出たのを受け、翌年(昭和30年)、「(第一回)「原水爆禁止世界大会(原水禁大会)」が開催され、「原水爆禁止日本協議会(「原水協」)」が発足します。が、昭和36年からソ連が核実験を再開したことで、「原水協」の中でも意見が2分します。日本共産党は共産主義圏の対抗策としてソ連の核実験を支持し、日本社会党は全面禁止を主張しました。そして、昭和38年に「部分的核実験禁止条約」に米英ソが調印すると、日本共産党はそれにも反対。ソ連といえども「強国が核を独占することには反対」ということでしょう。日本社会党系の人が「原水協」を脱退して新たに「原水爆禁止日本国民会議(「原水禁」)」ができますが(昭和40年結成)、さすがに今は協調してやっていますよね・・・???

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レオ・シラード アインシュタイン ルーズベルト
レオ・シラード
ルーズベルト

核兵器の研究・開発は、第二次世界大戦勃発後に、ナチス・ドイツ、日本、米国、ソ連、英国、カナダ、フランス等ですすめられ、米国、英国、カナダは、昭和17年10月頃より、原子爆弾開発を目的とした「マンハッタン計画」を推進、昭和20年7月、初めて核爆発に成功します(ページ上部の写真参照)。昭和14年、米国に亡命していたユダヤ人物理学者レオ・シラードらが、ナチス・ドイツが先に核兵器を保有することを恐れ、同じく米国に亡命していたユダヤ人物理学者アインシュタインの署名を借りて、ルーズベルト大統領に核兵器開発を促す手紙を書いたのがきっかけになったようです。

そして、最初の核爆発実験成功の21日後の8月6日に広島で「ウラン原子爆弾」が投下され、その3日後の8月9日には長崎に「プルトニウム原子爆弾」が投下されました。4日間という短い間に、2種の原子爆弾が、ともに日本において試されたのでした。昭和20年3月、日本への原爆使用が懸念されるようになったとき時、シラードは、その懸念を覚書にしたためています。ルーズベルト大統領にも日本への投下の意思がありませんでしたが、昭和20年4月に急死、その後大統領になったトルーマンが投下を許可したとされています。原爆がもたらした惨状を知ったからでしょう、アインシュタインも手紙に署名したことを悔いたようです。

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米国は、広島・長崎に投下した年の翌年(昭和21年)から核実験を再開、 ソ連は昭和24年に、英国は昭和27年に、フランスは昭和35年に、中国は昭和39年に、インドは昭和49年に、パキスタンは平成10年に、北朝鮮は平成18年に、初の核実験を行なっています。実験回数の総計2379回で、大気中でも502回行われ、出力されたエネルギーを総計すると広島の原爆の3万5千発以上に相当するそうです。各国の実験回数は、米国がだんとつで1127回、ついでソ連が726回、英国が45回、フランスが210回、中国が45回、インドが2回、パキスタンが1回(北朝鮮の代理実験とされる)、北朝鮮が6回(?)。yaxsocomによる下の動画は、どの場所でどのくらい核爆発が起きたか視覚化したもの。

「部分的核実験禁止条約」(昭和38年)がアンフェアで、新たな分断や憎悪を生み出したことからでしょう、33年経って平成8年、「地下核実験」を含む全ての核実験を禁止する「包括的核実験禁止条約」が国連総会で圧倒的多数の支持で採択され、日本も署名・批准しましたが、米国、イスラエル、イラン、エジプト、中国、北朝鮮、インド、パキスタンの8ヶ国が未批准のためまだ発効されていないようです(平成30年現在)。だんとつで核実験を行なっている米国が批准したら、他の7ヶ国も批准するのではないでしょうか?

レオ・シラード『シラードの証言』(みすず書房)。翻訳:伏見康治ほか 仲 晃『アメリカ大統領が死んだ日 ~一九四五年春、ローズベルト~(岩波現代文庫)』
レオ・シラード『シラードの証言』(みすず書房)。翻訳:伏見康治ほか 仲 晃『アメリカ大統領が死んだ日 ~一九四五年春、ローズベルト~(岩波現代文庫)』
川崎 哲 『核兵器を禁止する (岩波ブックレット)』 堤 未果 『もうひとつの核なき世界 (小学館文庫)』
川崎 哲『核兵器を禁止する(岩波ブックレット)』 堤 未果『もうひとつの核なき世界(小学館文庫)』
山本おさむ『赤狩り 〜THE RED RAT IN HOLLYWOOD (1)(ビッグコミックス)』(小学館)。米国が核を独占することを危惧してソ連に原子爆弾の情報を流したセオドア・ホールのことや、映画「ローマの休日」の知られざる真実など 山本おさむ『赤狩り 〜THE RED RAT IN HOLLYWOOD (1)(ビッグコミックス)』(小学館)。米国が核を独占することを危惧してソ連に原子爆弾の情報を流したセオドア・ホールのことや、映画「ローマの休日」の知られざる真実など

■ 馬込文学マラソン:
佐多稲子の『水』を読む→

■ 参考文献:
●『凛として立つ(佐多稲子文学アルバム)』(菁柿堂 平成25年発行)P.108-114

■ 参考サイト:
・ ウィキペディア/・原子爆弾(平成31年3月24日更新版)→ ・ドイツの原子爆弾開発(平成28年12月20日更新版)→ ・日本の原子爆弾開発(令和元年7月2日更新版)→ ・マンハッタン計画(平成30年12月25日更新版)→ ・アインシュタイン=シラードの手紙(平成30年8月2日更新版)→ ・トリニティ実験(令和元年5月29日更新版)→ ・核実験(令和元年7月22日更新版)→ ・核実験の一覧(平成30年12月30日更新版)→ ・水素爆弾(平成31年4月21日更新版)→ ・部分的核実験禁止条約(平成31年1月14日更新版)→ ・ジョン・F・ケネディ(平成26年7月26日更新版)→ ・キューバ危機(平成26年7月20日更新版)→ ・中ソ対立(平成26年6月12日更新版)→ ・平和共存(平成27年8月23日更新版)→ ・パクス・アメリカーナ(平成31年2月4日更新版)→ ・日本共産党(令和元年8月1日更新版)→ ・原水爆禁止日本協議会(令和元年5月24日更新版)→ ・原水爆禁止日本国民会議(令和元年5月24日更新版)→ ・包括的核実験禁止条約(令和元年5月25日更新版)→ ●REUTERSグラフィックス/世界の核実験→

※当ページの最終修正年月日
2019.8.6

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