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| 井上 靖『氷壁 (新潮文庫) 』。ストイックな主人公の登山家・魚津恭太にしびれる | 「氷壁[DVD]」(大映。昭和33年公開)。原作:井上 靖。魚津を菅原謙二、小坂を川崎敬三、魚津を慕う小坂の妹・かおるを野添ひとみ、ナイロンザイル実験に携わる八代を上原 謙、魚津が密かに思いをよせる八代夫人を山本富士子が演じる。待望のDVD化! |
主人公の魚津恭太は当地(東京都大田区大森)に住んでいることになっている。彼のアパートからは「拡ってゐる大森の
著者の井上 靖は、昭和24~32年までの8年間、当地(東京都品川区大井森前町(現・西大井一丁目(map→)あたり)と同区大井滝王子町map→)に住んでいる。ちょうど『氷壁』の新聞連載が終わる頃まで当地にいた。地理感のある場所を小説に使ったのだろう。
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| 28歳時の井上 靖 ※「パブリックドメインの写真(根拠→)」を使用 出典: 『井上 靖(新潮日本文学アルバム)』 |
反抗心が芽吹いた幼少期
明治40年5月6日(1907年)、軍医だった父親の赴任先の北海道旭川で生まれる。同年、父親は大陸に派遣され、翌年、母親と母親の郷里の伊豆湯ヶ島(map→)に移る。しばらくして母親は転勤がちな父親に伴うようになり、祖母に預けられた。湯ヶ島で3歳から13歳までを過ごす。祖母は曾祖父の妾だったので本家からは敵視されていた。幼いながらもそんな本家に反抗心を燃やした。自伝三部作の初編『しろばんば』にその頃のことが書かれている。
柔道で培ったストイシズム
大正9年(13歳)祖母が亡くなり、浜松の両親の元に引き取られる。ところが2年後、父親がまた台湾に転勤し、三島の親戚に預けられ、再び両親と離ればなれとなる。生活は放埒を極め、寄宿時代は舎監を寄宿舎から追い出すといった騒ぎまで起こした。教師や友人の影響で文学に興味を持ち始め、校内の雑誌に作品を発表。石川県金沢の第四高等学校では柔道部の主将を務め、インターハイでも活躍した。柔道の鍛錬から、井上文学の骨格となるストイシズムが培われたといわれる。
実力派の劣等生
九州大学英文科から京都大学の哲学科に転科するが、大学の講義にはほとんど出ず、東京の同人誌や詩人仲間との交流に明け暮れる。投稿しては入選を重ね、映画や演劇の脚本部にも出入りした。昭和10年(28歳)解剖学者・足立
新聞小説でブレイク
戦後、野間 宏のすすめで、詩から小説へ軸足を移す。昭和25年(43歳)、『闘牛』で第22回芥川賞を受賞。それを機に新聞社から身を引き、新聞小説の全盛期と、週刊誌の発達期の波に乗って、 『あした来る人』 (昭和29年)、 『氷壁』 (昭和31年)などのヒットを飛ばす。日本史を扱った『風林火山』(昭和28年)、西域や中国を舞台にした『天平の甍』(昭和32年)、 『敦煌』(昭和34年)などの佳作を生む。
転換
昭和35年(53歳)、ジンギスカンを主人公とする『蒼き狼』が、大岡昇平から「歴史小説は作者の主観を排して史実を重んじるべき」との痛烈な批判を受ける。忠言を真摯に受け止めたのか、以後の作風に変化が生じた。老いや死を見つめた作品、鎖国下のロシヤ漂流民を描いた『おろしや国酔夢譚』(昭和43年 61歳)、千 利休の死の謎に迫る『
平成3年1月29日、急性肺炎のため死去。満83歳だった。墓所は、熊野山墓地(静岡県伊豆市湯ケ島176 map→) ( )。
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| 『井上 靖(新潮日本文学アルバム)』 | 井上 靖『しろばんば(新潮文庫) 』 |
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| 井上 靖『天平の甍(改版)』(中央公論新社)。天平5年(733年)。第10次遣唐使として唐に渡った5人の留学僧の物語。21年後(754年)、5人のうちの1人・普照が鑑真を日本に連れてきた | 井上 靖『本覚坊遺文(講談社文芸文庫)』。弟子・本覚坊の手記の形で、利休の精神とその死の真相に迫る |
● 『井上 靖(新潮日本文学アルバム)』(平成5年発行)P.66-69 ●『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』(石岡繁雄 あるむ 平成21年発行)P.1-18 ●『昭和文学作家史(別冊1億人の昭和史)』(毎日新聞社 昭和52年)P.230-234 ●『大田文学地図』(染谷孝哉 蒼海出版 昭和46年)P.130 ●「待ち人は風雪に消えた 〜松濤 明と芳田美枝子「風雪のビヴァーク」(愛の旅人)」(平成19年8月18日「朝日新聞」掲載) ●『ナイロンザイル事件と『氷壁』の真実 〜穂高岳〜(凱風快晴 ~夏山をゆく 1〜)』(平成19年8月8日「毎日新聞」掲載)
●文庫本限定!井上靖作品館→ ●徳沢園→ ●北アルプスの風(信州ぶらり旅紀行)/街角散歩/大町博物館巡り/大町山岳博物館→
※当ページの最終修正年月日
2025.4.21