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昭和40年5月29日(1965年。
井上 靖(58歳)が、キルギス共和国の首都フルンゼ(現・ビシュケク)の宿で目覚め、窓に迫る雪をかぶったアラ・トウ山脈(
キルギス共和国は、天山山脈を境にして中国の
井上は高校時代くらいから
これらの西域もの・シルクロードものを、井上は文献を元にして書きました。中国を訪れたことはありましたが、西域に行くのは、この時(昭和40年)が初めてだったようです。何度も頭の中に思い描いた場所に実際に足を運び、感無量だったことでしょう。
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ところで、シルクロードとは何でしょう?
和訳すると「絹の道」。中国産の絹を西域に運ぶときにたどった交易路を、ドイツの地理学者・リヒトホーフェンがそう命名しました。中国の
路は時代により変遷し、いくつにも枝分かれしますが、主要なものは3本です。
紀元前200年頃にできた「中央路」(天山南路)は、もっとも重要な道筋で紀元300年代の前半まで盛んに使用されました。敦煌を出た後、楼蘭、コルラをへて、天山山脈の南麓をたどってパミール高原に達します。
中央路よりやや以前からあったと推測されている「南方路」は、敦煌を出て、楼蘭で中央路と分岐、アルトゥン山脈・
一番新しい、といっても紀元後数年してできたのが「北方路」(天山北路)です。日本ではまだ弥生時代。敦煌を出て、トルファンをへて、天山山脈の北麓をたどるもの。井上がキルギス共和国入りしてたどったのは、北方路の本路かその一支路でしょう。
シルクロードの多くが山脈と砂漠を避け、山脈の山麓部をたどっています。山麓部は高山の雪解け水が地下水になり、その地下水が湧き出てオアシスを形成。そこに町ができて、町をつなぐ形でシルクロードができました。
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オアシスの住民は、周辺の騎馬遊牧民の保護をうけ、他地域の農耕民との商取引を始め、次第に大規模な隊商(駱駝などに商品を積んで砂漠などを移動する商人の隊列)が組まれるようになります。この隊商貿易(キャラバン貿易)が莫大な富を産んだため、オアシスは繁栄し都市化していきました(オアシス都市)。紀元前200年代中頃からのことです。
隊商貿易は、サマルカンド(現在のウズベキスタンにあるオアシス古都)を中心とするソグディアナ地方出身のソグド人(イラン系民族)を中心に行われました。上記の3つの主要路から派生して、東は中国・日本、南はインド、西はビザンツ帝国(東ローマ帝国)にまで達します。当時は、ソグド語が一種の国際語でした。現在では、それら、東と西、そして南北をも結ぶ複雑に派生した道筋全体をシルクロードと呼ぶことが多いようです。
中国からの絹のほか、サマルカンドからはブドウ・メロン・ザクロなどの果実や小麦や綿花、インドからは香料、シベリアからは毛皮というように多種の商品が行き交いました。
文化も行き交い、ソグド文字はモンゴル文字や満洲文字の原型となり、
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玄奘 |
玄奘は「中央路」(天山南路)をたどり、天山山脈を超えてイシククル湖(井上が行ったキルギスのビシュケク近く)にいたり、なおも西に行きタシケントの方から大山脈地帯(崑崙山脈、ヒマラヤ山脈など)を大きく迂回してインドに入ります。
玄奘が長安を立ったのが627年(629年)で、インド各地を巡り、再びシルクロード (帰路は南方路)をたどって帰国したのが645年。16-18年間の大冒険でした。
こういった東西南北の交流路として栄えたシルクロード でしたが、海上交通の発展に伴って、次第にその役割を終えていきます。
『敦煌』を連載した昭和34年、井上はジンギス・カンの生涯を題材にした西域もの『蒼き狼』も連載しています。
宮沢賢治も、「西域異聞三部作」(「マグノリアの木」「インドラの網」「雁の童子」)など西域を題材にした詩や童話を数多く残しています。「
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| 「シルクロード(NHK特集)(デジタルリマスター版)〔DVD-BOX I〕」 | 前田耕作『玄奘三蔵、シルクロードを行く(岩波新書)』 |
■ 馬込文学マラソン:
・井上 靖の『氷壁』を読む→
■ 参考文献:
●『シルクロード紀行(上)』(井上 靖 岩波書店 平成5年発行)P.271-289 ●「キルギス共和国」※「デジタル大辞泉」(小学館)に収録(コトバンク→) ●「天山山脈」(小野菊雄)※「世界大百科事典(改訂新版)」(平凡社)に収録(コトバンク→) ●「井上 靖評伝」(曾根博義)※『井上 靖(新潮日本文学アルバム)』(平成5年発行)P.60-P.62 ●『詳説 世界史研究』(編集:木下康彦、木村靖二、吉田 寅 山川出版社 平成20年初版発行 平成27年発行10刷)P.47、P.141-143、P.146 ●「アンティオキア」(糸賀昌昭)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録(コトバンク→) ●「シルクロード」※「ブリタニカ国際大百科辞典」に収録(コトバンク→) ●『詳説 日本史研究』(編集:佐藤 信、
※当ページの最終修正年月日
2024.5.14