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明治27年5月6日(1894年。
徳冨蘆花(25歳)と妻の愛子(19歳)が、当地の「
2人は前日の5月5日に結婚。翌日やって来ました。蘆花は兄の徳富蘇峰(31歳)が経営する国民新聞社に勤めており、愛子も小学校の教員でした。彼女は次の日まっすぐ職場に行けるよう、着替えと教科書を風呂敷に包んで持ってきたようです。
その時のことが、蘆花の自伝的小説『富士』(晩年の作。未完。愛子との共著)に出てきます。曙楼に着いた2人は、昼食を済ませて、裏の本門寺に出かけます。
・・・仁王門、祖師堂、輪蔵と
夢か現実か分からないような、幸福な、それでいて静かな時が流れていきます。熊次が蘆花で、駒子が愛子です。そして、いよいよ初めての夜を迎える二人。
・・・明朝早立の事など女中に頼むで置いて、二人は長廊下を下つて、本館の鉱泉に
早湯の熊次は直ぐ上つた。隣の浴室に駒子はぽちやぽちややつている。上つてしまつた熊次は、少し待つてみて、
障子をあけると、
駒子は中々上つて来なかつた。
軽い不安を熊次は覚えはじめた。待つていればよかつた、と思ふた。往つて見やうか、とすでに起ちかけたその時、足音が静に近づいた。熊次の胸が
「遅くなりました」
熊次の眼の前に現はれたそれは、
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「最初の夜」もいろいろです。
つかこうへいの戯曲『蒲田行進曲』(昭和56年小説化され同作によりつかは直木賞を受賞)、翌昭和57年に映画となり大ヒットしました。
映画作りの現場が舞台です。主な登場人物は、大部屋(一つの部屋が与えられない下っ端の俳優)のヤスに、駆け出しのスター銀ちゃんと、かつてのトップ女優の小夏。ヤスはフィルムに顔も映らない斬られ役などが多いのですが、「映る映らないは関係ないんですよ。いい映画ができりゃいいんです」と映画を純粋に愛し、映画にどんな形であれ関われることに喜びと誇りを持っています。銀ちゃんからどつかれても彼のことを尊敬し、小春にも憧れています。
ある日、ヤスは、銀ちゃんと小春との間にできた子と小春を、銀ちゃんから押し付けられます。これからの銀ちゃんには小春がジャマなのです。銀ちゃんには若い恋人もできました。
ヤスに異存はありませんが、銀ちゃんにへいこらしているヤスを小春は軽蔑しきっています。それでもヤスは小春の出産と新婚の費用を作るために、二階から滑り落ちたり、谷へ転げ落ちたりと危険な役を買って出て荒稼ぎ。そんなヤスを見て、小春の心も少しずつ変わってきます。ヤスが小春を連れて、故郷に錦を飾る日がきました。そして、2人の最初の夜。
小説では、小春が風呂でヤスの母親の背中を流したあとヤスのいる寝室に戻ると、ヤスは大口をあけてイビキをかいていますが、映画ではちょっと違います。2人の “初夜”となります。日本映画史に残る名場面ではないでしょうか。
どんな過去があったにせよ、2人が初めて交わるとき、それが2人にとっての“初夜”。
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三島由紀夫作品が入れ子になった『欲望』という小池真理子さんの小説があります。そこに、インポテンツに悩み苦しむ男性と、“奇跡”を信じて交わる場面があります。
・・・「試してみて」私は言った。自分が口にした言葉が信じられなかった。だが、言ってしまったものは取り消せなかった。
「試してほしいの」私は身体をこわばらせたまま、おずおずと繰り返した。・・・(中略)・・・
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こんな「初夜」もあります。
北條民雄の『いのちの初夜』は、自身がハンセン病と診断されて、東京東村山村の
『いのちの初夜』という書名は、作品に感動した川端康成が提案し、北條が了承したものです。
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| 『富士(一)(徳冨蘆花集 16) 』(福永書店)。第二章「あけぼの」に曙楼での場面がある。本門寺からの富士が2人の未来を象徴 ●NDL→ | 「蒲田行進曲」(松竹)。監督:
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| 北條民雄『いのちの初夜(角川文庫)』。表題作のほか『望郷歌』『吹雪の産声』『眼帯記(随筆)』など7編を収録 | イアン・マキューアン『初夜 (新潮クレスト・ブックス) 』。初夜で顕現する2人の本性。「追想」という映画になっている→ |
■ 馬込文学マラソン:
・ 三島由紀夫の『豊饒の海』を読む→
・ 小池真理子の『欲望』を読む→
・ 川端康成の『雪国』を読む→
■ 参考文献:
●『蒲田行進曲』(つかこうへい 角川書店 昭和56年初版発行 昭和57年発行3版参照)P.103-105、P.124-127 ●「知ってほしい、ハンセン病のこと。 〜希望ある明日へ向けて〜(パンフレット)」(国立ハンセン病資料館 令和5年発行) ●『定本 北條民雄全集(下巻)(創元ライブラリ)』(平成8年発行)P.372-375
※当ページの最終修正年月日
2023.5.6