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昭和43年12月11日(1968年。 ※現地では12月10日)、川端康成(69歳)が、「スウェーデン・アカデミー」(オフィスは「ノーベル博物館」(スウェーデン ストックホルム ストールトルゲット2, 103 16 Map→)でノーベル文学賞受賞の記念講演をしました(受賞決定は2ヶ月ほど前の10月17日)。 演題は 「美しい日本の私」。*
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道 元 |
講演の冒頭で、川端は、
春は花
夏ほととぎす
秋は月
冬雪さえて冷しかりけり*
「花」「ほととぎす」「月」「雪」と四季の代表的な風物を並べたものですが、注目すべきは4行目の「冷し」。*
「冷し」は一般に「
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明 恵 |
川端が次にあげたのは
雲を出でて我にともなふ冬の月
風や身にしむ雲や冷たき*
と、「雲が冷やっこくありませんか」と月を気にかけ、*
山の端にわれも入りなむ月も入れ
夜な夜なごとにまた友とせむ*
と、自分も修行のためにお堂に入るけれど、「あなたも山の中にお入りなさい。そして、また会いましょう」と月に親しく呼びかけ、修行中、お堂の窓から月の光が差し込むのを見ては、*
我が光りとや月思ふらむ*
と、心が澄んできて自身と月の光とが渾然となるのでした。*
そして、次の絶唱となります。*
あかあかやあかあかあかやあかあかや
あかやあかあかあかあかや月*
と、澄み切った月の明かりの見事さにただただ感嘆するばかりのまさに絶唱。まるで近代の前衛詩のようです。*
月という自然物に親しみ、それを友とし、それと一体となり、それをひたすらの感嘆の対象とする。明恵また自然と合一する境地を生きたのでしょう。*
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良寛 |
次に川端が紹介したのは、良寛の辞世の歌です。*
形見とて何か残さん春は花
山ほととぎす秋はもみぢ葉*
自分が残せるものは何もないけれど、自分が死んでも、この変化に富んだ美しいは自然は残るのだ、と。自然と一体というより、全てが自然であり、無我の境地に達しているようです。*
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芥川龍之介については、「
講演で川端は、道元、明恵、良寛、芥川龍之介の他にも、西行、一休、親鸞、池坊専応、紫 式部、清少納言、和泉式部、赤染衛門、小野小町、永福門院をあげ、自然を通して、自然と合一する中で感得される、日本特有の美について語り、自身の作品もその美意識に立脚しているとしました。*
「自然との合一」の呼吸は、川端作品にどう反映してるでしょう。川端の代表作『雪国』の終末部に、主人公の胸に、天の川がすっと流れ込んでくる、ゾッとするほど美しい(ゾッとするほど哀しくもある)場面があります。*
・・・「どいて。どいて
駒子の叫びが島村に聞えた。
「この子、気がちがふわ。気がちがふわ。」
さう言ふ声が
今や、自然を含め周りにお構いなしの建造物がポコポコ出現しているようでもありますが、かつては、建造物にも意識するとはなしに「自然との合一」の美意識が色濃く反映されていたようです。日本を訪れた海外の人が強く心打たれたのも、そういった自然と人工との渾然とした様でした。日本の気候が比較的穏やかで、自然が柔らかな表情を見せることが多いことも影響していると思われます。*
自然は、地球の違う地点では違った偉大さを現し、その中から異なる美意識(没入感)も生まれてきたことでしょう。*
・・・感覚は別物だった。陽の球が大きく感じるし、空も色が濃いし、空気は甘く香る。日本の秋のような透明感は少なく、色のグラデーションも乏しく、濃い紅の光が液体となってこぼれるものの、太陽のそばで滞留してあまり大きくは広がらない。
イツキは三人を見る。クリムゾンの光に染まっている。日本の夕暮れだと、光を浴びると平面になったように感じるが、ここの光はみんなを立体的にする。・・・(星野智幸『ひとでなし』より)*
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| 川端康成 『美しい日本の私 (講談社現代新書)』。 |
鈴木大拙 『禅と日本文化(岩波新書)』。訳:北川桃雄 |
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| 『奇跡の大自然図鑑』(東京書籍)。監修:吉田英嗣、スミソニアン協会* |
■ 馬込文学マラソン:
・ 川端康成の『雪国』を読む→
・ 芥川龍之介の『魔術』を読む→
■ 参考文献:
●『川端康成(新潮日本文学アルバム)』(昭和59年発行)P.90-91 ●『美しい日本の私(角川ソフィア文庫)』(川端康成 平成27年発行)※「美しい日本の私」P.13-28、「末期の眼」P.130-146 ●「質問:春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪冴えて冷しかりけり」の句の作者と解釈を知りたい。」(レファレンス共同データベース→)*
※当ページの最終修正年月日
2023.12.11