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漢字は面白い(昭和21年11月16日、当用漢字1850文字が発表される)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジア太平洋戦争に日本が敗れてから3ヶ月ほど経った昭和20年11月12日(1945年。 )、「読売報知」(現「読売新聞」)が「漢字を廃止せよ」という社説を掲載しました。漢字は封建的だからやめろという内容です。

漢字廃止論は極端ですが( 志賀直哉(62歳)などはもっと極端で、日本語を廃止してフランス語の採用を提案(「改造」昭和21年4月号))、敗戦直後から、国語改革の声が方々からあがりました。公用文(法令など)や出版物(新聞、雑誌、書籍など)などでも難解な漢字が使われ、国語が多くの人のものになっていないという問題意識(「国語の民主化」に反する)からです。GHQは、漢字学習の煩雑さが日本人の学力を低下させ、それがために民主化が遅れてきたと考え、漢字を全廃してローマ字で表記することを検討していました。日本敗戦直後のGHQは日本が民主的な国になるよういろいろ親身になってくれました(朝鮮戦争が始まる辺りからおかしくなりますが。GHQを全否定する人たちはたぶん民主主義も嫌いな人)。

昭和21年11月16日(「日本国憲法」公布の13日後)、内閣が「当用漢字」(漢字廃止論などもあり国語審議会は答申を急いだのだろう。「当用」(「仮に」の意)の文字がある)を発表しました。使用頻度が高い1,850文字を選び、公用文や出版物などでの漢字使用の目安としました。漢字の字体も、簡素化・統一化された新字体で提示されました。漢字は10万字ほどもあるそうですからずいぶん絞られました。

山本有三

公用文に難解な漢字が使われているのを戦前から問題視していた山本有三(58歳)は、私邸に「三鷹国語研究所」を設立していました。日本語のローマ字化の提言を携えてGHQのホール少佐が訪ねてきます。山本は「日本語の問題は自分たち日本人の手で解決する」と突っぱねました。日本から漢字を守ったのです。山本は、翌昭和21年1月には「国民の国語運動連盟」を結成。日本国憲法」の口語化を政府に進言(のちに「日本国憲法」の校正にも携わる)、4月には国語審議会の委員となり、その「漢字に関する主査委員会」の委員長になって「当用漢字」制定の立役者ともなりました。これらを推進するために貴族院議員を受け、昭和22年、貴族院が廃止されると、第1回参議院選挙に立候補し全国区9位で当選、昭和28年(65歳)まで務め上げました。山本が当地(東京都大田区山王三丁目45 Map)に住んだ時期とほぼ重なります。文部科学行政は山本級の識者に担ってもらいたいですよね。現在の文部科学省の大臣は誰でしたっけ?

調査・検討が一段落した昭和56年、「当用漢字」は廃止され、代わって「常用漢字」1,945文字が内閣から発表されます。平成22年に改定されて2,136文字となりました。義務教育期間中(小学校・中学校)に慣れ・できれば読み書きを習得することが望ましいとされる漢字を「教育漢字」といいますが、「常用漢字」とほぼイコールです。小学校学習指導要領には1,006文字が記載されており、中学校では残りの常用漢字も読めて使い慣れ、高等学校では常用漢字の読み書きができるようになることが求められています。2千文字ちょいですね!

2千文字超の習得は気が遠くなりそうですが、漢字には象形性があるし(このページのタイトル辺りに「鳥」(青い鳥)が飛んでます)、また漢字を構成する 部首ぶしゅ や部品にもそれぞれ意味があるので、その成り立ちや構造を理解すると、学習が数段楽になり、年を取っても忘れずらいです。

部首とは、手に関係する漢字に使われる「手偏てへん」、金属に関係する漢字に使われる「金偏かねへん 」、心に関係する漢字に使われる「 立心偏りっしんべん 」といったその漢字を分類する上で使用される部品で、常用漢字中「手偏」のものだけでも、才、手、払、打、扱、抜、抄、把、投、択、技、批、抗、扶、折、抑、担、拓、抽、拠、拍、拘、拉、招、拡、押、拐、拙、承、拝、抵、抱、拒、披、抹、持、指、括、拷、拭、挟、拾、挑、拶、挙、捕、挿、挫、捉、振、捜、拳、挨、捗、授、捨、掘、採、接、探、描、掛、控、掃、捻、推、掲、措、排、据、揺、揮、握、換、揚、搭、提、援、損、携、搾、摂、搬、摘、摩、撲、撤、摯、撃、撮、操、擁、擬、擦、と94文字ほどあります。「手偏」の「才」の部分(書く時は3画目を跳ね上げる)は「手」からの派生形なんでしょうし、「手偏」の漢字の多くが手を使った動作を表していることに気づきます。「打つ」といえばだいたい手で打ちますし、「抱く」のも多くの場合手を使いますね。

詳しく見ると、「打」の右側の部分( つくり )の「丁」は くぎ の象形で、「手」+「釘」で打つという意味が形成されたのが分かります。

あと重要なのが、漢字の部品が おん を表すこと。「丁」は「ちょう」と読みますが、「丁」が付く「打」「町」「頂」も「ちょう」と読みます(打は「だ」の読みが一般的だが、 打擲ちょうちゃく では「ちょう」)。

こういった、部首や旁やその他の部品の意味や音を理解すると、初めて見る漢字でも意味や読みを推測できます。

漢字「整」の成り立ち

漢字「整」の成り立ちを知った時は、思わず膝を打ちましたね、面白い!って。右上の部分は「ノ文のぶん 」(「ノ」と「文」が合体)と言いますが、人が棒を持っているところの象形です。左上の「たば 」は枝とかの束の中央を縄で束ねた象形。「正」は、「一」(線)のところできちんと「止」(足裏の象形)で、正しいという意味になっています。「整」は、出っ張ったり引っ込んだりしたところのある束を棒で叩いて なら して、きちんとした状態(正しい状態)に「整える」ことなんですね! 「正」があるので読みは「せい」と分かります。

棒を持った人の象形の「ノ文」を持つ漢字には、「教」「改」もありますが、教えるのも、改めさせるのも、昔は棒や鞭を使ったようで、体罰肯定の野蛮な時代があったことを漢字が物語っています。 嫉妬 しっと 」が「女偏」の漢字からできているのにも訳がありそうです。

下ネタで恐縮ですが、「しり」から出る「水」は「尿にょう 」ですし、「米」が「異」なった状態で出れば「 ふん 」ですね!

難しい漢字を使ってさも上等な文章であるかのように気取るのはどうかと思いますが(カタカナ文字で煙に巻く文章も多い)、面白い漢字はどんどん使って日本語を豊かにしていきたいものです。植物名や鳥の名や地名なども漢字で書いた方がその特徴がよく伝わります(仮名書きは味気ない)。ただし、多くの人に読ませる文章なら、常用漢字以外の漢字や特殊な読みには振り仮名が必要ですね(公用文や出版物などでは必須)。

漢字はいいなぁと思うのは、漢字で他の漢字語圏の人と少しはコミュニケートできることと(へイターはそれが嫌みたい)、急ぎで本に目を通したい時でも漢字を追っていけば要点をそれなりに拾うことができること。印象付けたいことを漢字にして、あとは仮名書きにするよう心がけている筆者も多いことでしょう。

円満字 二郎『常用漢字の事件簿 (生活人新書) 』(日本放送出版協会)。漢字にまつわる怪事件・珍事件から見えるものは? “ミゾウユウ首相”も登場! 『部首から知る漢字のなりたち』(理論社)。監修:落合淳思 。漢字学習は、部首の成り立ちを知るところから。知っているようで案外知らない?
円満字 二郎『常用漢字の事件簿 (生活人新書) 』(日本放送出版協会)。漢字にまつわる怪事件・珍事件から見えるものは? “ミゾウユウ首相”も登場! 『部首から知る漢字のなりたち』(理論社)。監修:落合淳思 。漢字学習は、部首の成り立ちを知るところから。知っているようで案外知らない?
根本 浩『語呂合わせで覚える 書けない漢字が書ける本 (角川ソフィア文庫) 』。誰も書けない(?)憂鬱とか蘊蓄とかが書けてしまう! 語源にも触れている 『死者の書(白川 静の絵本)』(平凡社)。編・画:金子都美絵。白川 静の著作から抜粋され、再構成されている。生まれ、育ち、老い、そして死ぬ・・・。漢字から想う人の一生
根本 浩『語呂合わせで覚える 書けない漢字が書ける本 (角川ソフィア文庫) 』。誰も書けない(?)憂鬱とか蘊蓄とかが書けてしまう! 語源にも触れている 『死者の書(白川 静の絵本)』(平凡社)。編・画:金子都美絵。白川 静の著作から抜粋され、再構成されている。生まれ、育ち、老い、そして死ぬ・・・。漢字から想う人の一生

■ 馬込文学マラソン:
志賀直哉の『暗夜行路』を読む→

■ 参考文献:
●「当用漢字と『路傍の石』 〜有三が国語改革に託したもの〜」(円満字 二郎)※「三鷹市山本有三記念館会報(第4号)」(平成23年3月発行) PDF→ ●『山本有三(新潮日本文学アルバム)』(編集・評伝・年譜:永野 賢 昭和61年発行)P.70-80 ●「当用漢字」(林 巨樹)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録コトバンク→ ●「常用漢字」(林 巨樹)※「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)に収録コトバンク→ ●「教育漢字」※「ブリタニカ国際大百科事典」に収録コトバンク→ ●「丁」「整」「束」「正」 ※『漢語林(新版)』(米山寅太郎、鎌田 正 大修館書店 昭和62年初版発行 平成6年発行新版参照)P.10、P.478-479、P.543-544、P.592-593

※当ページの最終修正年月日
2023.11.11

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